【銀魂】彼女の小指には赤い糸が沢山ある【沖田総悟】

浮気相手が、21人目 ページ21

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ー貴女side



上手く騙されてくれたらとは思っていた。
バレた所で別に支障は無いけれど。

髪飾り、どうしよう。
…大切なもの、とは思ったものの
私も、何で大切に持ってるのか。

そろそろ捨て時だろうか。


どうせ、まともに返しては貰えないだろうし。



「仕事、止めようかなぁ…」



仕事帰りに真上に自分を照らしてくれる
月を見上げながらそんな独り言を呟く。
独り言は夜闇に消える。

と、思われたけれど

その独り言に答えてくれるもの好きが
この江戸の町にはいる訳で
答えてくれた人の声が私の後ろから聞こえた。



「何か悩み事か?」



聞き覚えのある声にゆっくり振り向くと
笠を被る人物が目の前に映る。
目元が笠で隠れているからか
腰までは行かずとも背の半分くらいまである
その手触りの良さそうな髪と立ち振る舞いに
一瞬、女性かと錯覚させる。

けれど私の独り言に答えた声は男で
身長や体付きは着物に隠れていても
男だと確かにわかる。

笠が上にあげられ見える瞳と目が合うと
彼は控えめに笑みを浮かべた。

私も控えめに笑みを返すと彼の名前を呼んだ。



「小太郎さん。お久しぶりですね」


「ああ、…遅くに女性一人は感心しないな」



桂小太郎。それが彼の名前だ。
彼と初めて出会った時は銀時達と出会った時でもあって、

あの日から今まで、江戸の町で会えば
会話を交わすくらいには関係は続いている。



「お仕事の帰りなんです」


「ふむ、万事屋だったな。送っていこう。」


「ふふ、ありがとうございます」



彼はそう言うと私の隣に立ち
歩き出す私に歩幅を合わせてくれた。

普段は賑わう江戸の町も夜は人も減り
今現在、大通りを歩くのは私達二人だけ。
まるで二人以外誰も居ないかのように静かで
落ち着くような感覚と共に
寂しいような感情を覚えた。

寂しい?私が?



「…小太郎さん、聞いていいですか?」


「む、何だ?」


「誰かと一緒に居るのに
寂しいと思う事ってありますか?」


「…」



私の言葉に笠の奥で彼の眉が
一瞬、ピクリと動くのが見えた。
何か言うのを迷っているのか目を逸らしたが
すぐに彼は私に視線を向けると
私の頭に手を乗せ優しく微笑みながら言った。



「お前の言う感覚と同じかは分からないが
誰かの目に自分は見えていなくて
それに少し心苦しさを感じた事ならある。

寂しい、という感情なのかは俺にも分からん」



笠に隠れる汚れを知らないような
綺麗な微笑みはきっと私しか知らないのだろう

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