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第五十五幕 ページ9

「……あ?」

その行為に旧鼠は目の色を変える。
それを見ていた手下たちは「もうダメだ」「こいつ終わったな」とヒソヒソ話を始めた。
旧鼠が指を鳴らし、何かの合図を出す。


「キャアアアア!!」

後ろからの悲鳴に、ゆらが振り向く。

いつの間にか、二人の周囲には大量の鼠で溢れていた。
「私のカナに近づくな!!
フシャアアーーー!!」

Aは何とか鼠を払い落とし、精一杯の威嚇をする。

「やめっ…その娘らに何するんや!!」

ゆらは貪狼に攻撃を命令しようとするも、旧鼠の伸びた鋭い爪が彼女の肩に置かれる。
旧鼠への警戒心を解いてしまったのだ。

「やめとけ。ネズミは幾らでも増やせる。
だからその式神はしまいな…」

二人を助けるためだと、仕方なく貪狼をしまう。

その一瞬を狙って、旧鼠はゆらの頬を殴った。
そのまま気絶し、倒れ込む。

「「ゆらちゃん!!」」

「お前ら、丁重に扱えよ。
こいつらは大事なエサだからな…。」

しかし、Aはジッとすることは出来なかった

カナから離れて、すかさず旧鼠の合間にはいる。
そして、手にしていた物を振り上げて、彼の前開きの白いスーツを引き裂いた。

「旧鼠様!?」

「コイツ…まだ抵抗する気かよ!!」

旧鼠は彼女の両腕を上げて固い壁に押し付けた。
ニヤけた面で顔に息がかかるほど距離を縮める。


「いてぇじゃねぇか…威勢の良い仔猫ちゃんも嫌いじゃない。
だが、力の差も分からないほどあんたはバカなのか?あの二人がどうなっても良いってのか?

それになんだ…そのキバ(・・)は。」

彼女が手にしていた物はソラの尖った牙だった。
大きさはオピネルくらいで、太く頑丈そうな歯牙だ。

Aはニコニコした顔で彼の質問に答える。

「不思議だよね〜妖怪にも生え変わり時期ってあるんだね?これは私の相棒が先日抜けた物でね。
護身刀代わりにしてたんだけど、さすがに妖怪には歯が立たないかあ…

歯だけに(・・・・)。フハハ!」

「ぶっ…」

背後にいた手下の一人が笑い出しそうだったのでもう一人が素早く口を封じる。

寒いギャグも、手下たちのことも旧鼠にはどうでもよかった。

「妖怪とつるんでんのか…あんた碌な人間になれねぇな。」


「そうかもね…
でも、これだけは言える。」

笑顔を崩さず、虚な瞳で旧鼠を見詰める。


それは彼女の深淵が開いた瞬間だった。




「あんたみたいに…女の子を痛ぶって愉しむ、汚い大人にはならないわ。」

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桃子(プロフ) - めっちゃ面白くて好きです!!忙しいと思いますが更新頑張ってください! (2021年5月15日 22時) (レス) id: f758fcdb57 (このIDを非表示/違反報告)
氷麗 - とっても面白いです!色々忙がしいと思いますが、更新頑張って下さい!p(^-^)q (2020年8月6日 10時) (レス) id: 0b4aa008b9 (このIDを非表示/違反報告)
レモンティー(プロフ) - みいらさん» コメントありがとうございます!とても励みになります( ;∀;)ノロマ更新ですが気長にお待ちいただければ幸いです。今日の夜に更新しますね! (2020年6月23日 12時) (レス) id: a8c312a3ba (このIDを非表示/違反報告)
みいら(プロフ) - とっっても面白いです!更新頑張って下さい!! (2020年6月23日 10時) (レス) id: 8b1d0909e8 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:レモンティー | 作成日時:2020年5月28日 19時

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