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第六十六幕 ページ20

とはいえ、Aも薄々勘付いている。
心配しているのがソラだけでなく、床にふせているリクオやまだ半信半疑の氷麗も同じであることを。
団員のみんなも彼女の怪我を見て驚いていた。

それでも、彼女は行きたくて駄々をこねるがここらが潮時であることを悟り、その場にしゃがみ込む。

背中を丸めてしょんぼりとする姿は五歳児の落ち込み方に似ている。
これまで彼女の世話を焼いてきた氷麗だが、これはレアケースだ。

(この娘はこうやってべそをかくのね…。)

いつでも元気で、悩み一つ無さそうな子どもだった。
暗い部分を見せてこなかった彼女だからこそ、こういった面は本当に珍しいのだ。

それはその場にいた妖怪達も同様であり、わらわらと落胆する彼女に集まる。


「まあまあ、今回は屋敷で留守番してオイラたちと遊ぼう!!」

「そうだよ、投扇興とか花札とかやれることいっぱいあるしね!
夜は化猫屋でパァーっと賭博でもするか!」

「おいおいAはまだ未成年だぞ。」

「それは人間世界の基準だろ、妖怪世界じゃ成人してるから大丈夫だって。」

次々に慰めの言葉をくれる彼らに、Aは小さく微笑む。

「ありがとうみんな…人間のお友達とも思い出を作りたかったんだけど……今回ばかりは私が我儘だったね。」

切なげに目を伏せる彼女を見て、氷麗は物悲しく感じていた。
彼女の側に寄り、背中を摩る。

ソラはしばらく見つめて溜め息を吐いたあと、渋々とした声で話す。

「…………そこまでして、行きたい理由があるのならいくつか条件がある。
それを…守るなら…外出を許してやる…。」

その言葉を聞いてAは直様顔をあげる。
その顔は親戚が亡くなったのような驚きようをみせる。
その周りにいた妖怪たちも、信じられないと言いたげに目が点になっていた。

「な、なんだ貴様ら。
そんな目で見るな!!
……何黙ってるだ、アアン"?」

ひどく取り乱すソラに納豆小僧は一言。

「アンタも大概Aに甘いよな。」

・・・

「リクオ…もう寝てる?」

「起きてるよ…どうしたの?」

布団から出でこようとする彼を止め、Aから近づく。

「姉ちゃん、移っちゃう…」

「私は風邪ひいたことないから大丈夫。
私もね、合宿いけることになったんだよ。
…条件は多いけど」

何となく察しがついて、リクオは苦笑した。


「良かった…でも勝手にうろついたらダメだからね。」

「はいはい、リクオも早く元気になってね。
おやすみ」

「おやすみ…」

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桃子(プロフ) - めっちゃ面白くて好きです!!忙しいと思いますが更新頑張ってください! (2021年5月15日 22時) (レス) id: f758fcdb57 (このIDを非表示/違反報告)
氷麗 - とっても面白いです!色々忙がしいと思いますが、更新頑張って下さい!p(^-^)q (2020年8月6日 10時) (レス) id: 0b4aa008b9 (このIDを非表示/違反報告)
レモンティー(プロフ) - みいらさん» コメントありがとうございます!とても励みになります( ;∀;)ノロマ更新ですが気長にお待ちいただければ幸いです。今日の夜に更新しますね! (2020年6月23日 12時) (レス) id: a8c312a3ba (このIDを非表示/違反報告)
みいら(プロフ) - とっっても面白いです!更新頑張って下さい!! (2020年6月23日 10時) (レス) id: 8b1d0909e8 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:レモンティー | 作成日時:2020年5月28日 19時

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