備える ページ4
朝起きて、Aに朝食を出してもらった。
こいつ何でもできそう。
美味い。
今日はあいつも支度を進めるって言ってた。
他の客はもうすぐ出ていくそうだ。
俺は買い出しとか進めておくか…。
さて。
今俺が持ってるのは…愛銃のスコープ用の弾丸、食糧。
それと、蝶は……。
赤、青、黄色が3つずつ…か。
あと、いつも持ってる蝶の資料と魔導書。
妙にそわそわする。
せっかく行けるというのに…。
アプリコットで生き返らせる人はもう決まってる。
…父さん。
俺を猟師にしてくれた父であり師匠。
誰かの流れ弾が当たって死んじまった。
俺が小さい頃だったからな…。
もう一度、絶対会うんだ…。
「エリス。」
ふと、俺を呼ぶ声。
やっぱ長い名前だからな。
こっちのほうが呼びやすいだろう。
「お客様、全員帰られたわ。私、買い出しに行くんだけど、一緒に行く?」
「おう。」
「この辺の街は初めてだな。」
「住まいはこの辺りじゃないの?」
「海の方だ。肉があまり食べられないから猟師として山に出入りしてるんだ。」
へぇ、と答えるA。
ふと、違和感を覚えた。
「なぁ、A。」
立ち止まって、持っている銃を肩から下ろす。
「お前さ、どうして俺のことそんな信頼してんの?出会ってまだ1日経たないぜ?俺がお前を騙して誰もいないところで殺そうとしてるかもしれないんだぜ?なぁ、なんで俺の言葉を容易に信じた?」
すると、Aはあの時と同じ笑顔を見せた。
「あなたも…きっと、必死なの。毎日毎日、現れないアプリコットを探して。だからきっと騙す心の余裕なんてない。私がそうであるように。それに、騙そうとしてるなら、そんなことこんなところで言わないでしょう?」
あ…。
「そう、だな。お前、やっぱ冷静だな。」
「別に?まぁこの際…すがれるものには何でもすがりたい…そういうことよ。」
……。
人間とよく話してる感じがする。
やっぱ、俺がこいつに声をかけたのは間違いじゃなかったみたいだな…。
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作者名:円香 | 作成日時:2018年8月7日 16時