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「そう。まあ今でも目はつけられてるけど、意味が違うよ。いじめだったね」
顔をしかめた大野。
「やな記憶だ」
大野が部隊に入隊したのは十七歳のとき。
他の班員と比べても一番若い年齢での入隊だ。
所属年数が長いだけあって、他の班員が知らない時期がある。
次に所属歴が長い櫻井とも、丸二年以上の差があるからだ。
「俺、二月に入ってきたからさ。一年目の期間が二ヶ月で終わったんだよ。部隊の所属年数の数え方ってちょっと特殊じゃん？」
「そうだね、基本的には年度での計算になるから」
四月に入った人と、二月に入ってきた人が同じ「一年目」としてカウントされるのだ。
三月入隊だけ特例で翌年度の入隊と同じ扱いにされるものの、二月はそれから外れる。
三月入隊と四月入隊の人が多い中、二月入隊の隊員はかなり少なく、部隊全体で見ても数人しかいない。
大野はその数人のうちの一人だ。
「もしかして、入隊時期がずれてたことから始まったの？」
「だと思う。あまりにも珍しい時期に入ってきたから、野次馬で俺のこと調べるやつが多かったんだろうね。そしたらびっくり、あの憎い雹隊隊員の大野の弟じゃないかって話」
これか、と大野は呟く。
大野が指差した先に書かれている名前。
「大野隆。この『大野』が俺の兄だよ」
所属班は、雹隊十五班。
「年からして、西本さんと安達さんの前の雹隊十五班ってことですか？」
大野のファイルを覗き込んだ柳谷。
「そうだろうね。あいつが雹隊にいたのは俺が入る二年前からって聞いたから。俺が入ってからは一年くらいで死んだはず」
「ということは雹隊十五班もそのくらいの時期に解散されてるってことですね。十五年前にはもうこの班はない。三年ほどの班」
「だと思う。にしても、あいつも雹隊十五班だったのか」
約二十年前の雹隊十五班がこのメンバー、と柳谷は呟く。
「覚えようとしてるの？」
「はい。こういうときは先に覚えてから整理した方が早いので」
松本と相葉もそれぞれファイルをめくっている。
「必要そうな情報を見つけて、柳谷さんに全部覚えてもらった方が早そうだね」
「だね。澪ちゃん頼りになるけどそれでも大丈夫？」
「大丈夫です」
柳谷もファイルをめくっている。
「何も分からない私にできることは情報整理くらいです。任せてください」
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作者名：翠霞チサ
| 作成日時：2023年2月18日 23時
