307. ページ7
最後にはしごを上ってきた櫻井が、天井裏の隠し部屋を見て目を丸くした。
入り口周辺は大量のファイルが詰め込まれた本棚が並んでいる。
しーっ、と口元で指を立てた二宮が囁く。
「誰かが来たら厄介だ。はしごは上げておいた方がいいよ」
「そうだね」
周囲を警戒している大野と柳谷を除いた四人で、はしごを引き上げる。
元通りに入り口を閉めたところで、やっと一息ついた。
窓もないため暗いものの、目を慣らせば見えないこともない、という暗さの部屋の中。
天井が低いため、少しかがまないと頭をぶつけてしまう。
「誰かいる？」
目を細めていた大野に問いかける相葉。
人の気配に敏感な大野は、こういう周囲が見えない場所での索敵を得意としていた。
「んや、人の気配はないけど……なんか変な感じはする」
警戒を緩めていない大野を見て、他の班員たちも警戒体勢に入る。
大野の勘は侮れない、というのは長年過ごしていてよく分かっている。
本棚に目を向けていたらしい柳谷が、「二宮さん」と声をかけた。
「どうした？」
「これ。ここに置いてある資料、昔の雹隊の資料ですよ」
ファイルの背表紙に書いてある年月日は、確かに昔のもの。
「この辺は五十年前……本当に残ってるかもしれないね」
資料を漁り始めた二宮と柳谷はそのままにして、部屋の中をゆっくりと歩く四人。
先頭を歩いていた大野が、ピタリと足を止めた。
そこは、本棚がなくなり少し開けた場所だった。
一番後ろを歩いていた相葉が覗き込んで、目を丸くする。
「これって」
そこにあったのは、膝立ちの状態で並べられているアンドロイドだった。
部屋の奥にはモニターとサーバーラックが並んでいる。
「すげえ場所だな、変な感じがしたのはこいつらが原因か」
大野がアンドロイドに近寄るのを見て、櫻井と松本も近寄る。
「あれ、これ」
既視感を覚えたのは櫻井だけではなかったらしい。
「この顔、アレボルで見たような」
松本の呟きに、大野はアンドロイド全体の顔を見回す。
「顔が違うものもあるけど、大体同じ顔だな。誰かをモデルにしてるんだろうけど、さすがにモデルが誰かまでは」
大野の言葉が止まった。
一体のアンドロイドに吸い寄せられるように歩いていく。
「大ちゃん？」
不審に思った相葉が声をかけるものの、大野には聞こえていないようだった。
そのアンドロイドの顔は、どことなく大野と似ていた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 646人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：翠霞チサ
| 作成日時：2023年2月18日 23時
