306. ページ6
「その辺のはず。どう？ 何かある？」
「ちょっと待ってね……松潤、もうちょい左行ける？」
松本に肩車をされた大野は、二宮の指示で天井を触って確認している。
十五班全員で雹隊の射撃場にやってきたのは、柳谷の推測が合っているかどうか確かめるためだ。
隊長にも許可を取らずに来ているため、櫻井を見張りとして入り口のドア近くに立たせていた。
射撃場は普段立ち入り禁止の場所。
いくら十五班でも、見つかれば事情を聞かれることは間違いなかった。
「あ」
大野が天井の一部に触れる。
ここだけ薄く切れ込みが入っていて、動きそうだと思ったのだ。
少し浮き上がった天井の板。
「そこだ、はしごが下りてくるはず。相葉くん、避けないと危ないかも。潤くんもその向きから動かないで」
「分かった」
頷いた松本。
「この板、ちょっと重いな。松潤、しっかり支えてて」
「了解」
大野がそのまま少し力を入れて天井板を動かすと、二宮が言った通り勢いよくはしごが下りてきた。
「うお、何事？」
そのままはしごは床に激突し、鳴った大きな音に櫻井が振り返った。
「ごめん。こんな大きな音が鳴るとは思わなかった」
「それは誰も思わないし、ここは防音になってるから大丈夫だけど……はしご？」
はしごが下りてきた場所を見てみれば、確かに床にも少し跡がついている。
はしごの足にクッションはついていたが、意味がない。
「危ねえな、こんなのぶつかったら怪我するぞ」
呆れ声の大野。
本来ならストッパーがあって途中で止まるはずなのだが、どうやらそのストッパーが壊れているらしい。
二宮も昔に一度だけ教えられた記憶を辿っていたため、合っていたことにホッとする。
「このはしご、綺麗だね」
下りてきたはしごを見て相葉が呟く。
「最近誰かが使ったみたい」
柳谷と二宮の目が合う。
おそらく、思った通りだ。
「柳谷さん、さすがだね」
「いえ、そんな」
はしごを眺めて、松本も目を細める。
「埃が落ちてきてない。和が言った通り、何年も使われてないとするならさすがにおかしい」
松本の肩の上からサッとはしごに足を乗せ、そのまま天井裏に上がっていった大野。
「どう？」
松本の問いかけに、大野が顔を覗かせた。
「ビンゴ。みんな上がってきて」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 646人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：翠霞チサ
| 作成日時：2023年2月18日 23時
