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「前の雹隊十五班に名前がある。でもこれ、だいぶ前だな」
「何年前？」
大野もパソコンに駆け寄る。
「大野って名字自体は珍しくないけど」
大野の反応に、松本も不思議そうな顔をしている。
「俺の家、部隊関係者が多いんだよ。大野って名字なら俺が知ってる親戚の可能性がある」
二宮が計算している隣で振り返った大野。
松本は瞬きをする。
「え、そうなの？」
「うん。松潤には言ってなかったっけな」
「聞いてないね」
相葉と顔を見合わせた松本。
相葉も聞いてはいなかったようだ。
「これ、六十年前とかじゃない？」
二宮の計算が終わったらしい。
「六十年？」
「六十年前で雹隊所属なら、今は九十歳とか百歳だろうね」
大野は顔をしかめていたが、ハッと目を見開いた。
「じいちゃん。俺のじいちゃんがそのくらいかも」
「あなたのおじいさん？」
櫻井と二宮の目が合った。
大野の祖父は部隊の幹部だったと聞いた。
存在を消されていて、まったく辿れない大野の兄ではない。
「なら記録は残ってるはず」
「探せる？」
「探す」
すぐにパソコンを叩いたが、二宮は舌打ちをする。
「デジタルのデータが残ってない。残ってるとするなら紙資料だ。でもそれも」
六十年前の紙資料など、どこに残っているだろうか。
「柳谷さん。資料がしまってある場所分かる？」
画面をずっと見ていた柳谷。
二宮に声をかけられて、瞬きをした。
「六十年前ともなれば、かなりのものが廃棄されていると思います。それでも残っているなら、本部にあるんじゃないでしょうか」
「……やっぱり本部か」
「あの。それよりちょっと気になったんですけど」
またパソコンに目を向けた柳谷。
「雹隊十五班って、過去のデータがあまり残っていない班なんですね。他の班と比べても不自然なくらい資料が残っていません」
大野は眉をひそめる。
「というと？」
「別の場所に保管されてるんじゃないですか？ 部隊の中で」
二宮は頬杖をつく。
一理ある。
「部隊の中と言われても、部隊の中なら俺はどこでも大体入れるわけで……資料を保管する場所なんて」
あ、と声を上げたのは相葉だった。
「それで澪ちゃんは気にしてたの？ 訓練場の天井の高さのこと」
部隊の中での隠し部屋なんて、そこしかない。
顔を見合わせた大野と二宮。
「そういうこと？」
柳谷は頷く。
「あの場所に絶対何か隠してありますよ」
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作者名：翠霞チサ
| 作成日時：2023年2月18日 23時
