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椅子に座って、コンピュータの電源ボタンを押した二宮。
「起動する。ってことはこのパソコンは生きてるのか。一体どこから電気を」
ぶつくさ言っている二宮は置いておいて、櫻井は周囲を見回す。
アンドロイドが並ぶこの部屋は、不気味だ。
突然動き出しそうな、そして人間が混ざっていたとしても気づかないような。
「このアンドロイドの中に大野くんのお兄さんの顔があったんだって」
「……となると、お兄さんがこれに関わってたのは間違いなさそうだね」
うーん、と二宮は腕を組む。
目の前にはパスワードの入力を求める画面。
「このパスワード突破にどれだけの時間がかかるかな」
櫻井も苦笑する。
「これはかなりの難易度だね。何桁のパスワードなのかも分からないし」
「アルファベットの大文字小文字と数字、なんなら記号まで入ってくる。こんなのはマトモに当たってもしょうがないから」
立ち上がって、近くの机の引き出しを漁り始めた二宮。
「こういうのは探してみると意外とメモが出てきたりするものなんだよね……ほらあった」
二宮の手にはパスワードらしきものが書かれた紙が握られていた。
手を丸くした櫻井。
「本当にあるんだ」
紙に書かれた文字列を打ち込み、ロックを解除した二宮。
「ま、本当のこと言うとさ。隊員の入れ替わりって激しいから、大体コンピュータのパスワードってこういう紙に書いて残してあるのよ。部屋のパソコンもそうでしょ？」
言われてみれば、確かにそうだったような。
部屋のパソコンは据え置きで動かせないため、パソコンのパスワードは代々その部屋の班員に引き継がれている。
霜隊でそうなっているからか、班員の入れ替わりがない雹隊でも同じようになっていた。
「ああ……部隊の慣例ってことか」
「そういうこと。非戦闘員ならほぼ全員知ってるかな。戦闘員はどうなのか知らないけど」
だってさ、と頬杖をついた二宮。
「突然班員全員が死んだりすることもあるでしょ。そんなときに次の班への引き継ぎとかできるわけないじゃん？ 最低限、パソコンのパスワードくらいは緊急時には誰でも分かるようにしておいてるわけよ」
なるほどね、と櫻井は呟く。
「つまり、このパソコンを使ってる人はその慣例を知ってる人」
「そういうこと。これには非戦闘員も関わってる。そしてそれはおそらく江藤さんだな」
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作者名：翠霞チサ
| 作成日時：2023年2月18日 23時
