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大野が部隊に戻ってきたのは、櫻井と松本が戻ってきてから十分後だった。
「大ちゃん！ 無茶なことしないでよ！ 俺めちゃくちゃ心配したんだからね！」
最初に大野に怒ったのは、二宮ではなく相葉だった。
櫻井と松本も心配そうに大野を見ている。
「ごめん」
バツが悪そうに頭を掻く大野。
「ニノも何で止めないの！」
「この人は止めても無駄だからね。で、それは？」
肩をすくめた二宮は、大野の右足を指差す。
パソコンに向かっていた柳谷も、二宮の問いかけに振り向いた。
「え？」
「足。歩き方変だけど」
「そんなこと」
「あるでしょ。誤魔化せるとでも思ってんの？」
じっと大野の顔を見る二宮に、ため息をついた大野。
「ちょっと痛めただけ。湿布でも貼ってりゃ治る」
「捻った？」
松本から渡された救急箱の中を漁る二宮。
「そう。段差でね」
「珍しいじゃん」
「気張ってたから。足元あんま見てなかった」
はい、と二宮に渡された湿布を受け取って、ソファに座る。
湿布を貼り始めた大野を見て、二宮もソファに座った。
「翔さんと潤くんから軽く話聞いたよ。やっぱりダメだった？」
「ダメだったね。川嶋さんが死んでた」
ふーん、と頬杖をついた二宮。
川嶋のことは二宮も知っている。
アレボルにやってくる客を統制していた人物だ。
そんな人が死んだとなれば、もうあの店は機能しない。
「大野さんが誘導した人ってのは誰だったわけ？」
「わかんない。でも、どこかの要人だと思うよ」
「まあ、アレボルにいるならそうでしょうね。どこに誘導したの」
「部隊が持ってる避難用の部屋あるじゃん。あそこ」
少し考えて、櫻井と顔を見合わせた二宮。
確かに繁華街の雑居ビルの中に、部隊が持っている部屋はある。
現場から帰還する際、直接部隊に帰ると問題がありそうなときに使う一時避難所だ。
「あそこ、部隊関係者以外を立ち入らせていい場所だっけ？」
「たぶんダメな場所だね」
大野はパチパチと瞬きをする。
「緊急事態だよ？ 人が死ぬかもしれなかったんだよ？」
「うん。でもダメな場所に変わりはないね」
「……ダメ？」
ため息をついた二宮。
「ちゃんと始末書を書くならどうにかするよ。どうせ処理するのは俺だから」
「ありがとうニノ。大好き」
「そんな言葉じゃ騙されませんからね」
「ったく、仕事を増やして」と文句を言いながらも、二宮はこれ以上責めるつもりはなさそうだ。
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作者名：翠霞チサ
| 作成日時：2023年2月18日 23時
