06:知らぬ間に ページ6
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先輩が私の髪の毛に掴みかかってきた。
痛い。暴力反対。許されない。
殴ってきたら絶対に仕返ししてやるぞのスタンスでいたのに、それよりも先に怒号が飛んできた。
「げっ、ダル……」
「お前ら2年だろ! 何でこっちの棟入って来てんだ、2年校舎に帰れ」
「何でうちらが怒られなきゃなんないわけ?」
学年主任の先生だった。
多分騒ぎを聞きつけてか、私達の喧嘩を止めてくれた。
私に対しての心配は特になかった。髪引っ張られたのに。
事情を説明して、一気にさあっと人が引く。
その中に凛くんの姿は無くてほっとした。
「宇野、何があった?」
「好きな人が被ったんで喧嘩してました」
「何じゃそら……。しょうもない事で喧嘩すんな、教室戻れ」
いや、私が仕掛けたわけじゃないし。
まあしょうがないか、と息を吐いたと同時に、周りで心配そうに見張っていたクラスの友達数人が私の元に駆けつけてくれた。
「A、大丈夫!?」
「めっちゃ修羅場で助けられなかった…!」
「全然大丈夫だよお。それより凛くん来てないよね?」
「えっっ……と、多分来てないと思う…」
どういうわけか黒目をあたふたさせながら誤魔化された。
そりゃこんなにいっぱい人がいるんじゃわかんないか。
彼女達の手を取って立ち上がる。
「でもさ、糸師くん来てた方が絶対良かったくない?」
「だよね。そしたらAの愛の告白も聞いてくれただろうし」
「絶対糸師くんの中でAの株上がるよ」
「やめてよー! 本人のいない所で色々言ったって伝わんないじゃん」
「……いやーあの顔は結構、」
「あの顔って?」尋ねれば慌てたようにもう一人の友達がその口をふさいだ。
彼女達は何かを隠すように笑った。怪しい。
「……ま、いいか! 凛くんに迷惑かかんなかったし」
「Aって本当に糸師くんが一番なんだね、」
「そうだよ。私の最推しだから」
休み時間があっという間に終わってしまった。
この休み時間、凛くんの顔見に行こうと思ってたのに。
次の昼休み、早く食べ終わって拝みに行こっと。
「__っわ!? びっくりした、い……糸師こんな所で何してんだ」
「……別に、何でも」
「(あの天才が笑ってた……!?)」
勿論、一部始終を凛くんに聞かれてたなんて、私はこの先ずっと知る由はない。
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おそらまめ(プロフ) - 彩華さん» 彩華様、感想長らく気づかず遅くなり申し訳ありません。ありがとうございます。きっと二人、これからも沢山言い合いして、言葉にならない愛を育んで、お互いが明日を生きる理由がお互いになっていくんだと思っています。また機会があればどこかでお会いしましょう! (7月21日 13時) (レス) id: 77433e9bba (このIDを非表示/違反報告)
彩華(プロフ) - 完結から時間経っているとはわかっているんですけど、これだけは言わせてください。めっちゃ好きです!夢主ちゃんも凛君も末長く幸せになって!これからも他の小説での交信頑張ってください。応援しています。 (7月11日 0時) (レス) @page45 id: 2b870d0ab1 (このIDを非表示/違反報告)
おそらまめ(プロフ) - mooさん» moo様、コメントありがとうございます!原作で摂取できない分滅茶苦茶に砂糖煮詰めております(^^)楽しんで頂けたようで何よりです。ご覧頂きありがとうございます。 (6月1日 18時) (レス) id: bb8d3426f9 (このIDを非表示/違反報告)
moo(プロフ) - 糖分過多ー!!面白かったです! (6月1日 3時) (レス) @page45 id: e3fdbdb203 (このIDを非表示/違反報告)
おそらまめ(プロフ) - ルアさん» ルア様、コメントありがとうございます!大切に作ったので、そう言って頂けて作品も作者同様喜んでおります。こちらこそ、作品を応援して頂きありがとうございます! (2023年4月19日 14時) (レス) id: bb8d3426f9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おそらまめ | 作成日時:2023年3月27日 18時