愛し凛くんわかりません【ブルーロック】

外伝:彼はどこ？ ページ42

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「糸師くん凄いな〜…。フランス行ったんだ」

「そうみたいだね」

「みたいって、二人別れたの？」

「ううん？」





凛くんが学校を実質退学してから２回目の秋を超えようとしていた。
進路に関して皆が大学受験の勉強に勤しむ中、私とよっちゃんは指定校組でのんびり学校に顔を出していた。





「淡泊だねえ。２年も会ってなかったら冷めるのかね」

「いや、全然冷めてないよ？
　最近は連絡無いけど出国する前は毎日連絡くれたし」

「会いたいとかは思わないの？」

「うーん。会いたいけど、前提として私は凛くんのファンだし、こうして画面越しでも動いてる姿が見れたら満足だから！」





何か言いたげに口をつぐんだ友達を横目に自分の携帯の画面に目を落とす。
１週間か。…もうそんなに経つんだ。



『大学入ったらお金貯めてフランス行くね♡』

『あほ。勉強しろ』

『勉強はするよー』
『息抜きで凛くんに会いに行きたいの』





私のメッセージに既読をつけたまま固まったままのトーク画面。
忙しいんだろうな。頑張ってるんだな。





「Aー、また明日ね」

「うん。ばいばーい」





携帯に意識を取られていると、いつの間にかもう靴を履き替えていたよっちゃんが私に手を振って昇降口へ歩き出していた。


一人で帰る道も漸く慣れてきたなあ。
たった４か月しか一緒に過ごしてないのに、その毎日が限りなく輝いていて、凛くんの隣で他愛もない事を話していた日々は、世界中の何よりも美しかった。





フランスか。遠いな。
携帯で調べて、その距離と飛行機の値段にうんざりしてブラウザを閉じた。

凛くん。私凛くんがいつまでも大好きだよ。
誰よりも応援してるよ。何があろうと、ずっと味方だよ。





「……っでも、彼女なんだよ……」





無意識に開いていた彼とのトーク画面に、いつまでも送れなかったメッセージが表示される。

『会いたい』

誤タップでそれを送信してしまって、焦りで一瞬脳が覚醒して慌てて送信取り消しを押した。


何やってんだろ、私。
恋人なのに、会いたいの一言すら、迷惑をかけたくなくて送れないなんて。



アスファルトに紅葉が落ちている。
赤黄色にまばらに染まる体が羨ましい。
今すぐ凛くんの元へ風に乗っていけたらいいのに。





「――……遠距離は、つらいよ。凛くん」





ざあ、

強い風が吹いた瞬間 不意に私の体を誰かが後ろから包み込む。
大好きなレモンの香りがした。





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