外伝:私の特別な日 ページ40
.
夏休みが空けて、私の人生で一番大事な日がやってきた。
……そう。
何を隠そう、凛くんの誕生日!
「ってなわけで、凛くん欲しいものない?」
「金」
「迷ったら現金渡すね」
「本当に渡すやついるかアホ」
サプライズなんてものは私に出来るわけがないので、久々の学校での再会は程々に来る9日の為に取材を取りなす。
「どっか行きたい所とかない?」
「ねえ」
「えーーそれじゃ困るのに」
「……お前は自分の意思がねえのかよ」
「あるけど」
「だったらお前の行きたい所にでも連れてけ」
「凛くんを困らせたくないじゃん。遊園地とか映画館とか、人混み苦手でしょ?」
「…………たまには俺を困らせろよ」
長いため息と沈黙の後に凛くんはぼそっと呟いた。
たまに見せる、この凛くんがたまらなく可愛くて悶絶しそう。
友達や凛くんのクラスメイト、それから自分の財布とも相談して、無難に映画館に行くことにした。
「お前ホラー見れんのか」
「苦手だよ?」
「んじゃ何でホラーにしたんだよ…!」
「だって凛くん好きでしょ?」
「お前の行きてえ所っつっただろうが、あ?」
「私の行きたい所はいつでも凛くんが喜ぶ所でーす! てことでもう前売り券買っちゃってるし行こ!」
開始早々わなわなと震える凛くんが面白くて、固く握られた手のひらを開けてその上にチケットを乗せた。
「――こ、怖かったー…!」
「あんなぬるいもんで怖いって言ってたら何も見れねえぞ」
「凛くんは楽しめた?」
「……まあ」
「じゃあ良かった!」
ホラーを見るなら雰囲気が大事だという友達の勧めで、夜ご飯も食べた20時の帯で見たため、映画館を出たのは22時を過ぎたころだった。
ホラーを見た後だからか、うだる暑さの中にどこか悪寒がする。
そんな私を見かねてか、凛くんは最寄り駅についてからも「送る」と私の家の方面まで来てくれた。
家の近くの広場に寄って、全く人気のない階段に二人して上の方に腰かける。
凛くんの方から、今日初めて繋がれていた手をほどかれて、その手は私の顔の前に「ん」と差し出された。
「朝からずっと持ってんだろ。気になんだよ」
「あーそうだよね! ごめん遅くなって」
喜んでくれるかな。
初めての誕生日、私にとって、自分の誕生日よりも大切な日。
どきどきしながら手渡す紙袋を、凛くんは優しい顔して受け取ってくれた。
.
465人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
おそらまめ(プロフ) - 彩華さん» 彩華様、感想長らく気づかず遅くなり申し訳ありません。ありがとうございます。きっと二人、これからも沢山言い合いして、言葉にならない愛を育んで、お互いが明日を生きる理由がお互いになっていくんだと思っています。また機会があればどこかでお会いしましょう! (7月21日 13時) (レス) id: 77433e9bba (このIDを非表示/違反報告)
彩華(プロフ) - 完結から時間経っているとはわかっているんですけど、これだけは言わせてください。めっちゃ好きです!夢主ちゃんも凛君も末長く幸せになって!これからも他の小説での交信頑張ってください。応援しています。 (7月11日 0時) (レス) @page45 id: 2b870d0ab1 (このIDを非表示/違反報告)
おそらまめ(プロフ) - mooさん» moo様、コメントありがとうございます!原作で摂取できない分滅茶苦茶に砂糖煮詰めております(^^)楽しんで頂けたようで何よりです。ご覧頂きありがとうございます。 (6月1日 18時) (レス) id: bb8d3426f9 (このIDを非表示/違反報告)
moo(プロフ) - 糖分過多ー!!面白かったです! (6月1日 3時) (レス) @page45 id: e3fdbdb203 (このIDを非表示/違反報告)
おそらまめ(プロフ) - ルアさん» ルア様、コメントありがとうございます!大切に作ったので、そう言って頂けて作品も作者同様喜んでおります。こちらこそ、作品を応援して頂きありがとうございます! (2023年4月19日 14時) (レス) id: bb8d3426f9 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:おそらまめ | 作成日時:2023年3月27日 18時