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35:ばかに見せる背 ページ35

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私の憧れの人は、しっかりと私の目を見てついに言った。
初めて、名前を呼ばれた。…何で私なんか。





「お前は、バカだ。本物の馬鹿だ。
 俺なんかに捕まる、ばかで放っておけねえ正真正銘の馬鹿」

「…ばかって言いすぎじゃない?」

「お前が思ってるほど、俺は天才じゃねえし、ヒーローでも、王子さまとやらでもねえ。
 頭ん中はいつでも、クソ兄貴を潰して世界一になる事が全てだ」





初めて語られた、凛くんの成り立ち。
お兄さん居たんだ。……思い出した、糸師って名字を。





「どいつもこいつも俺の名前を聞けば糸師冴だの、あいつの弟だの、
 〜〜……一度だって俺は…! アイツを凌駕できなかった……ッ」

「凛くん」

「お前は、俺を知らなかった。だから純粋に俺を見た。
 ……ッお前だけには、比べられたくなかった」





――……ああ、そっか。
触れた彼の手は驚くほど冷たかった。
彼が時折見せた物凄く寂しい背中の奥には、熱く滾るほど、劣等感が支配していたんだ。


今まで、凛くんはどんな思いでサッカーを続けていたんだろう。
天才と持て囃されて、完璧である事を強いられて、人と関わる事を怖がって。





「私の中の凛くんは、ずっと凛くんだよ。
 誰かと比べた事なんて、一度もない」

「………A」

「ずっと目の前の一番大好きな凛くんを必死に追いかけてきたもん」





また、凛くんが目をぎゅっと顰めて赤くなっていた。
唇が切れる程噛み締めていて、感情を堪えている。





「今の俺は、……お前を助けた、ヒーローでもねえし、優しくできるような余裕だって、ねえ」

「凛くん、聞いたんでしょ? 私は何したって凛くんを好きでいる自信があるって」

「……それは」

「寧ろ私は初めて凛くんの弱い所が見れてもっと好きになったよ」

「………本当に、ばかだなお前は」





充血した目が疲弊しきって私を見つめる。
それから長いため息をつくと、また私を包み込むように抱きしめる力を強くした。





「誰がなんと言おうと凛くんが一番大好きで、どんな時でも凛くんの味方でいる。
 だから凛くんはどんな姿見せてくれたっていいんだよ。
 私は影でずっと応援してるから」

「………お前今何て言った」





猫みたいに私に縋りついていた凛くんが突然顔を上げて私の肩を引き剥がす。
見下ろす顔は異様に冷たくてぞっとした。
え、今私何か地雷踏んだ?





「何で影で応援すんだよ。俺の一番近くに居ろ」





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36:素敵な居場所→←34:確信した心



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おそらまめ(プロフ) - 彩華さん» 彩華様、感想長らく気づかず遅くなり申し訳ありません。ありがとうございます。きっと二人、これからも沢山言い合いして、言葉にならない愛を育んで、お互いが明日を生きる理由がお互いになっていくんだと思っています。また機会があればどこかでお会いしましょう! (7月21日 13時) (レス) id: 77433e9bba (このIDを非表示/違反報告)
彩華(プロフ) - 完結から時間経っているとはわかっているんですけど、これだけは言わせてください。めっちゃ好きです!夢主ちゃんも凛君も末長く幸せになって!これからも他の小説での交信頑張ってください。応援しています。 (7月11日 0時) (レス) @page45 id: 2b870d0ab1 (このIDを非表示/違反報告)
おそらまめ(プロフ) - mooさん» moo様、コメントありがとうございます!原作で摂取できない分滅茶苦茶に砂糖煮詰めております(^^)楽しんで頂けたようで何よりです。ご覧頂きありがとうございます。 (6月1日 18時) (レス) id: bb8d3426f9 (このIDを非表示/違反報告)
moo(プロフ) - 糖分過多ー!!面白かったです! (6月1日 3時) (レス) @page45 id: e3fdbdb203 (このIDを非表示/違反報告)
おそらまめ(プロフ) - ルアさん» ルア様、コメントありがとうございます!大切に作ったので、そう言って頂けて作品も作者同様喜んでおります。こちらこそ、作品を応援して頂きありがとうございます! (2023年4月19日 14時) (レス) id: bb8d3426f9 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:おそらまめ | 作成日時:2023年3月27日 18時

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