32:稲妻のように ページ32
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どうせ指定校推薦で、名前を書きゃ受かる高校だ。
ただ家が近いってだけで選んだ私立校。
受験当日も開始10分前に会場に着いた。
――階段を上りきる前に確認できたちっせえ頭。
その場でへたり込んで見えた顔は歪んで今にも泣き出しそうだった。
「何してんだ、お前」
放っておけなかった。
過去に俺を見上げたその女は、確かに現在目の前で満面の笑みを浮かべる女だ。
受験票を失くしたとほざく馬鹿女。
荷物を持っている。今来たわけじゃないとすると、どこか寄り道してたのか。
見渡せば、右隣に女子トイレ。少し先に会場。
大方、この緊張感でトイレに行こうとしたが荷物が気になって慌てて全部詰め込んだか。
数秒で思考を張り巡らせて、モブ共がやりがちな「大事なものは一番奥にしまい込む」行動パターンを試す。
「鞄の中」
「……え、でも鞄はさっき」
苛立ちが勝って先に鞄をひったくっていた。
全てひっくり返して舞い落ちる紙切れ。
ほらな。読み通りだ。
どうせ鞄の中敷きの下にでも挟まってたんだろ。
くだらねえ。無駄な事に時間を削られた。
放心して紙を見つめるモブを置いて先に会場へと向かった。
「………待って!! ありがとう、ヒーロー!」
「…………あぁ?」
「高校で貴方を見つけて、ちゃんとお礼する!」
目いっぱいに涙を溜めてるくせに、そいつは俺をまっすぐ見据えて叫んだ。
馬鹿かこいつ。たかが受験票を見つけたくらいで。
こんな頂点でもない学校の為にこんな必死になって……。
合格して、俺を見つけるって?
手の施しようのない馬鹿も居たもんだな。
受かる保障も明確にない中、先を確信して俺に会うって宣言するなんざ。
「………お前が居れば、俺の高校生活も楽しくなるかもな」
「……!」
踵を返して、そいつの顔を覗き込んだ。
どんぐりのような目は、俺を映して輝きを見せる。
瞳の中の俺は、クソ兄貴を潰すなんて目的は置いて、純粋に目の前の女に興味を向けていた。
「――………そうか。お前が」
「……っは! 教科書取りに来たんだった!
それじゃまた!」
2か月前の姿と重なって現在に戻る。
俺に威勢よく話しかけてきたかと思いきや、突然険しい顔してロッカーへと向かった。
「何か、雷みたいな子だったな……糸師?」
「なんだ」
「今お前笑ってた?」
「あ? 目腐ってんのか」
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おそらまめ(プロフ) - 彩華さん» 彩華様、感想長らく気づかず遅くなり申し訳ありません。ありがとうございます。きっと二人、これからも沢山言い合いして、言葉にならない愛を育んで、お互いが明日を生きる理由がお互いになっていくんだと思っています。また機会があればどこかでお会いしましょう! (7月21日 13時) (レス) id: 77433e9bba (このIDを非表示/違反報告)
彩華(プロフ) - 完結から時間経っているとはわかっているんですけど、これだけは言わせてください。めっちゃ好きです!夢主ちゃんも凛君も末長く幸せになって!これからも他の小説での交信頑張ってください。応援しています。 (7月11日 0時) (レス) @page45 id: 2b870d0ab1 (このIDを非表示/違反報告)
おそらまめ(プロフ) - mooさん» moo様、コメントありがとうございます!原作で摂取できない分滅茶苦茶に砂糖煮詰めております(^^)楽しんで頂けたようで何よりです。ご覧頂きありがとうございます。 (6月1日 18時) (レス) id: bb8d3426f9 (このIDを非表示/違反報告)
moo(プロフ) - 糖分過多ー!!面白かったです! (6月1日 3時) (レス) @page45 id: e3fdbdb203 (このIDを非表示/違反報告)
おそらまめ(プロフ) - ルアさん» ルア様、コメントありがとうございます!大切に作ったので、そう言って頂けて作品も作者同様喜んでおります。こちらこそ、作品を応援して頂きありがとうございます! (2023年4月19日 14時) (レス) id: bb8d3426f9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おそらまめ | 作成日時:2023年3月27日 18時