31:過去に遡る ページ31
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酷い頭痛だった。
中学から幾度となく持て囃されて、いい加減うんざりだ。
こいつらは学校に何しに来てる?
弱味噌を振り絞って入学した筈がいざ入った途端勉強は4の次程に友達やら色恋沙汰やら、勝手にほざいてろ。
「ひゅう、糸師大量じゃん」
「…………黙れ、失せろ」
「こっわ! おい、糸師? どこ行くんだよ?」
猿みたいに馬鹿の一つ覚えで似たような手紙を許可なくロッカーに入れられて、嫌気が差してんだ。
俺の反応を窺うように遠目で監視している3人のモブ共に大股で近づいていって、入っていた手紙をつき出した。
「えっ……糸師く、」
「お前らのクソくだらねえ仲良しごっこに俺を巻き込むんじゃねえ。
迷惑なんだよ。こんな事すればお前らが目に留まるとでも思ったのか?」
「ひぃっ……!」
情けない声出す代わりにこの手紙をさっさと受け取れよ。
面倒になって女の足元に手紙を捨て置いた。
「ちょっとやりすぎじゃねえ?」
「あれだけしたって次の日には忘れてまた性懲りもなく入れてくるんだよ馬鹿は」
「当たりきついなー…」
クラスが一緒になっただけで絡むお前も、是非あいつらと一緒にしてやりたいもんだけどな。
入学式からまだ3日しか経っていないのに毎日見た事無いモブが俺を見て目を変えるのが、不快を通り越して吐き気すら覚えた。
「――……あっ!」
騒がしい昇降口を吹き飛ばすくらいの威力で、叫び声がした。
顔を傾けて睨み上げると、目の前には俺の頭一つ分小さい女が大胆にも俺を指差して仁王立ちしていた。
「誰だお前」
「やっぱり居たー! 絶対合格してると思った!
やっと会えたー嬉しいー!!」
「近づくんじゃねえ。誰だ」
ぱたぱたと短い足を無駄な動きでこちらへ向かわせている。
名も知らねえ奴がまた俺を見て理解できない動きをする。
目の前のモブを全身で拒否するように手を前に突き出してその動きを制した。
ぴたりと止まって俺を見つめる女。
やたらと純粋で、チビの体に見合わねえそのでかい目は俺を真っすぐと見据えていた。
「……そっか! そりゃ覚えてないよね!
いいの、私お礼したかっただけだし!」
「………は?」
「あの時助けてくれてありがとう! おかげでこうして合格できたよ」
でかい目がなくなるくらいくしゃくしゃにそいつは笑った。
風が弱く吹いて女の匂いが俺の鼻先まで届く。
その瞬間弾けるように記憶が蘇る。
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おそらまめ(プロフ) - 彩華さん» 彩華様、感想長らく気づかず遅くなり申し訳ありません。ありがとうございます。きっと二人、これからも沢山言い合いして、言葉にならない愛を育んで、お互いが明日を生きる理由がお互いになっていくんだと思っています。また機会があればどこかでお会いしましょう! (7月21日 13時) (レス) id: 77433e9bba (このIDを非表示/違反報告)
彩華(プロフ) - 完結から時間経っているとはわかっているんですけど、これだけは言わせてください。めっちゃ好きです!夢主ちゃんも凛君も末長く幸せになって!これからも他の小説での交信頑張ってください。応援しています。 (7月11日 0時) (レス) @page45 id: 2b870d0ab1 (このIDを非表示/違反報告)
おそらまめ(プロフ) - mooさん» moo様、コメントありがとうございます!原作で摂取できない分滅茶苦茶に砂糖煮詰めております(^^)楽しんで頂けたようで何よりです。ご覧頂きありがとうございます。 (6月1日 18時) (レス) id: bb8d3426f9 (このIDを非表示/違反報告)
moo(プロフ) - 糖分過多ー!!面白かったです! (6月1日 3時) (レス) @page45 id: e3fdbdb203 (このIDを非表示/違反報告)
おそらまめ(プロフ) - ルアさん» ルア様、コメントありがとうございます!大切に作ったので、そう言って頂けて作品も作者同様喜んでおります。こちらこそ、作品を応援して頂きありがとうございます! (2023年4月19日 14時) (レス) id: bb8d3426f9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おそらまめ | 作成日時:2023年3月27日 18時