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30:噛み締める唇 ページ30

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「……どうせ今まで避けてたのも、俺を諦めるって魂胆だったんだろ」

「気付いてたの……?」

「寧ろあれで気付かねえ方が無理だろ。今まで見逃してやってたんだよアホ」

「えっっ、絶対バレないと思ってたのに……!」

「ぬりいんだよお前の考えてることなんざ。
 俺には通用しねえ」





肩口に顔を埋められたまま腰を引き寄せられて、身動きが取れなくなる。


いつもはあんなに大きい筈の背中は今じゃ私の身長に合わせて小さく丸まって、ジャケットに皴が寄っている。





「……お前は俺が好きなんだろうが」

「……そうだよ。大好きだよ」

「勝手に……俺を諦めてんじゃねえよ、タコ」





「お前だけは、変わろうとすんじゃねえ」


そう言った彼の声はまだ震えていた。
いつの日か見せた、彼の寂しい背中だ。



少し腰を反らして凛くんの頬を両手で包む。
怯える事もなく顔を上げた凛くんの目は真赤になっていた。





「……凛くん…」

「――……お前が、言ったんだろ。
 俺が何しようが、どんなになろうが、俺の事好きだって」

「待って、何で、それ。…もしかしてあの時聞いて…?」

「お前が言い出したんだから、最後まで責任持って俺を好きでいろよ…!」





だめだ。泣きそう。
凛くんが涙は見せまいと唇を噛み締めて目を充血させている。

切なる言葉がひしひしと私の胸を突き刺して、喉からこみ上げる熱い熱を逃がすように幾度か瞬きした。





「でも、凛くん…。私と一緒じゃ、いつか迷惑かかる……。
 今は私を気に入ってくれてても、いつか嫌われたら、って思うと」

「何腑抜けた事気にしてんだよ」

「っだって凛くんいっつも女の子の事突き放すじゃん!」

「お前にはした事あるかよ」





瞬きした拍子に、耐えきれなくなった思いが形になって一粒目から零れ落ちた。

頬を伝うそれを、りんくんが手の甲で優しく撫でる。
冷たい手が熱を冷やす。





「お前の事だけは突き放したりなんかしねえ」

「………なんで」

「少しは頭使えクソ鈍感」





それだけ言って、凛くんはまた私を抱きしめた。
押し倒される勢いで体を預けられて、支え切れずに後ろに倒れて窓に張り付く。

それでも私の後頭部を抑えて、窓にぶつけないように配慮してくれる大きな左手がうだるほど愛しい。





「……お前が初めて話しかけた時、」





抱きしめられながら、凛くんがぽつぽつと話し出した。

初めての会話。……入学式から数日後の頃、だろうか。





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おそらまめ(プロフ) - 彩華さん» 彩華様、感想長らく気づかず遅くなり申し訳ありません。ありがとうございます。きっと二人、これからも沢山言い合いして、言葉にならない愛を育んで、お互いが明日を生きる理由がお互いになっていくんだと思っています。また機会があればどこかでお会いしましょう! (7月21日 13時) (レス) id: 77433e9bba (このIDを非表示/違反報告)
彩華(プロフ) - 完結から時間経っているとはわかっているんですけど、これだけは言わせてください。めっちゃ好きです!夢主ちゃんも凛君も末長く幸せになって!これからも他の小説での交信頑張ってください。応援しています。 (7月11日 0時) (レス) @page45 id: 2b870d0ab1 (このIDを非表示/違反報告)
おそらまめ(プロフ) - mooさん» moo様、コメントありがとうございます!原作で摂取できない分滅茶苦茶に砂糖煮詰めております(^^)楽しんで頂けたようで何よりです。ご覧頂きありがとうございます。 (6月1日 18時) (レス) id: bb8d3426f9 (このIDを非表示/違反報告)
moo(プロフ) - 糖分過多ー!!面白かったです! (6月1日 3時) (レス) @page45 id: e3fdbdb203 (このIDを非表示/違反報告)
おそらまめ(プロフ) - ルアさん» ルア様、コメントありがとうございます!大切に作ったので、そう言って頂けて作品も作者同様喜んでおります。こちらこそ、作品を応援して頂きありがとうございます! (2023年4月19日 14時) (レス) id: bb8d3426f9 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:おそらまめ | 作成日時:2023年3月27日 18時

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