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29:精一杯の虚勢 ページ29

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「な、なんっ……凛くん、」

「…………っんとに、お前は……」





0距離。
一瞬窓ガラス越しに見えた顔は私の肩口に埋まって見えなくなった。

おかしいくらいに近い距離に、漸く落ち着いた筈の心臓がどっ、と勢いよく音を立ててまた脈を打ち始める。


初めて触れた体は、私の体温よりもずっと熱かった。

乱れた息が私のうなじにかかる。熱くて、甘い。





「勝手に逃げてんじゃ、ねえよ」

「……っはい? 凛くんが追っかけるからじゃん!」

「お前が逃げるからだろ」

「だって走り出すから!」

「バカなLINE送るのが悪い」





これだけ息が切れてるのに、いつもの如くよく切れる頭で圧倒されてしまった。


黙り込む私の背中から、凛くんの心臓の音が伝わる。
ばくばく、バカって言った凛くんのそれは、ばかみたいに速い。




逃げ出そうと回されている凛くんの腕に手をかけた時、空いていた左腕が即座にその手を絡め取ってきてそのまま私の手ごときつく抱きしめられた。





「………明日、話すってのは」

「え?」

「何を言おうとしてた」

「、それは」





耳元で凛くんの少し喉の切れた甘い声が掠める。
いまだに速い心臓の音で、それだけ私を必死に追いかけてくれていたんだと分かってしまって。





「……凛くんに、言わなくちゃいけない事が」

「それは俺にとっていい話か」

「……た、ぶん。私凛くんの事、もう……」

「好きじゃねえっていうのか」





ぎゅう、
抱きしめる力が強くなって、苦しさに顔を顰める。





「っ違う。諦めるの。凛くんのこと」

「………あ?」

「私がどれだけ好きでも、凛くんは皆の王子さまだから…。
 私と凛くんじゃ、釣り合わないし」





次の瞬間、肩を回されてぐるんと身体が回転する。
久々に間近に見た凛くん。余裕のない目と目が合った。





「釣り合わねえって何だ」

「言葉の通りだよ。……私は主人公じゃないもん」

「バカか。今まで関係なく体当たりしてきただろうが」

「…っそれは、凛くんが私に興味なかったから……!」

「俺がお前に気触れた瞬間、ビビったか」





図星だった。
肩を掴む力が強まる。


怒鳴られるか、罵倒されるかを待ち構えていたのに、彼はその長い睫毛をゆらゆらと震わせて、そのままぽすんと私の肩に頭を預けた。





「………追いかけると逃げてく、面倒くせえ奴だなお前は」





凛くんの声は些か揺れていた。
顔は見えないけど、その声は泣いてるように思えた。




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30:噛み締める唇→←28:行きついた先は



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おそらまめ(プロフ) - 彩華さん» 彩華様、感想長らく気づかず遅くなり申し訳ありません。ありがとうございます。きっと二人、これからも沢山言い合いして、言葉にならない愛を育んで、お互いが明日を生きる理由がお互いになっていくんだと思っています。また機会があればどこかでお会いしましょう! (7月21日 13時) (レス) id: 77433e9bba (このIDを非表示/違反報告)
彩華(プロフ) - 完結から時間経っているとはわかっているんですけど、これだけは言わせてください。めっちゃ好きです!夢主ちゃんも凛君も末長く幸せになって!これからも他の小説での交信頑張ってください。応援しています。 (7月11日 0時) (レス) @page45 id: 2b870d0ab1 (このIDを非表示/違反報告)
おそらまめ(プロフ) - mooさん» moo様、コメントありがとうございます!原作で摂取できない分滅茶苦茶に砂糖煮詰めております(^^)楽しんで頂けたようで何よりです。ご覧頂きありがとうございます。 (6月1日 18時) (レス) id: bb8d3426f9 (このIDを非表示/違反報告)
moo(プロフ) - 糖分過多ー!!面白かったです! (6月1日 3時) (レス) @page45 id: e3fdbdb203 (このIDを非表示/違反報告)
おそらまめ(プロフ) - ルアさん» ルア様、コメントありがとうございます!大切に作ったので、そう言って頂けて作品も作者同様喜んでおります。こちらこそ、作品を応援して頂きありがとうございます! (2023年4月19日 14時) (レス) id: bb8d3426f9 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:おそらまめ | 作成日時:2023年3月27日 18時

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