14:一枚上手 ページ14
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約束の通り凛くんは2限終わりの休み時間に再び私に会いに来た。
昼食とトイレと移動教室以外は1日中退屈そうに教室に居座っている凛くんが!
私が原因で席を立って、何でもない休み時間に教室を出たのだ。
「私凛くんは休み時間教室から出たら死ぬ病気だと思ってた」
「お前脳みそ腐ってんのか。ん、教科書」
「ありがとー!」
弱い力で貸していた教科書を手にぱこんと頭をはたかれた。
私にとってはご褒美でしかないけれど、その分凛くんガチ恋勢に見られていないかひやひやする。
「宇野」
「なに凛くん?」
「放課後一緒に帰りてえ」
「…だめ」
「駄目がだめ。お前先帰んじゃねえぞ」
拒否権ないし、何だあの人間国宝わががま王子は。
言いたいことだけ言い残してそのまま自分の教室に寄り道することなく帰って行ってしまった。
凛くんは風邪でもひいてるんだろうか。じゃないとこの理想のような行動を取ってくれるわけがない。もしかして風邪は私の方で、幻覚を見てるんじゃないか。
「え、何だこれ」
凛くんから戻ってきた教科書にはみ出した付せんを見つけて、何の気なしにそのページを開けば、細くてきれいな字で『教科書助かった、授業中は寝んなよ』と書かれている。
凛くんの字だ。それからその付せんの真下は、私が前の授業で寝ぼけながら引いた、歪んだマーカーラインがあった。
「推しのファンサが激しい気がする」
「明らかに特別視されてるでしょ」
「へー糸師くんてこんな字書くんだ」
殆ど野次馬になった友達が、開きぱなしの教科書を見て口々に放つ。
確かに嬉しいけど、これは。……私の命が、もたない。
「…っは! もしかして今日勝手に帰ったら嫌ってくれるのでは!」
「まじでやめた方がいいよ。後悔するよ」
向かう放課後、ホームルームがせめて1組よりも先に終わっててくださいと思いながらそわそわと帰る準備を進めていた。
そして終礼の号令が鳴った瞬間立ち上がる。凛くんは来ていない。
「皆ばいばーい、またあした!」
「えっ本当に帰んの知らないよ!?」
凛くんが来る前に、階段を駆け下りて早足で昇降口へ向かった。
こうすれば少なからず私の学校生活が平穏になる気がする。根拠はないけど。
「おっせえ。帰んぞ」
バカみたいにるんるんでやってきた私の前に、なぜか彼は居た。
きっと変な顔している私を見て、凛くんは朝の時と同じ様に鼻を鳴らした。
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おそらまめ(プロフ) - 彩華さん» 彩華様、感想長らく気づかず遅くなり申し訳ありません。ありがとうございます。きっと二人、これからも沢山言い合いして、言葉にならない愛を育んで、お互いが明日を生きる理由がお互いになっていくんだと思っています。また機会があればどこかでお会いしましょう! (7月21日 13時) (レス) id: 77433e9bba (このIDを非表示/違反報告)
彩華(プロフ) - 完結から時間経っているとはわかっているんですけど、これだけは言わせてください。めっちゃ好きです!夢主ちゃんも凛君も末長く幸せになって!これからも他の小説での交信頑張ってください。応援しています。 (7月11日 0時) (レス) @page45 id: 2b870d0ab1 (このIDを非表示/違反報告)
おそらまめ(プロフ) - mooさん» moo様、コメントありがとうございます!原作で摂取できない分滅茶苦茶に砂糖煮詰めております(^^)楽しんで頂けたようで何よりです。ご覧頂きありがとうございます。 (6月1日 18時) (レス) id: bb8d3426f9 (このIDを非表示/違反報告)
moo(プロフ) - 糖分過多ー!!面白かったです! (6月1日 3時) (レス) @page45 id: e3fdbdb203 (このIDを非表示/違反報告)
おそらまめ(プロフ) - ルアさん» ルア様、コメントありがとうございます!大切に作ったので、そう言って頂けて作品も作者同様喜んでおります。こちらこそ、作品を応援して頂きありがとうございます! (2023年4月19日 14時) (レス) id: bb8d3426f9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おそらまめ | 作成日時:2023年3月27日 18時