11:天才は見ていた ページ11
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コートの端で観戦していた他のクラスたちも一気に立ち上がって湧き上がる。
もう私は立ち上がる気力すらなくて、ぜえぜえ全身で息をしながら打ち上げられた魚の様にコート外でうつぶせになっていた。
一度抱き合っていた5人が迷わず私の方へ駆け寄って手を伸ばしてくれる。
「凄いよA!」
「最後あのスライディングやばかった!」
「うちら優勝だよー!」
凄いのは皆の方なのに、スポーツをやってる人はみんな心が広い。
息も絶え絶えになりながら差し伸べられた手を掴もうとした。
その時、それは起こった。
「っえ、」
「え……ッ!?」
突然強い力で腰を持ち上げられる。
今まで勝利の歓声だったそれは、トーンを上げて違う種類のものになった。
重力を無視してぐわっと体があがる。
突如として私はさっきみていた自分の景色のずっと上の景色を眺める事になった。
周りから悲鳴に近い声が上がる。
私を抱き上げたのは、凛くんだった。
「え、なん、凛く」
「黙ってろ。保健室行くぞ」
「……っ何で分かったの、」
「バレバレなんだよ」
両手足が宙に浮きじたばたすると「暴れんな重え」と一喝されて私は成す術もなくその腕に担がれることとなった。
体育館は依然騒然としているし、残された友達に助けを求めると何とも形容しがたい顔をして私に手を振っている。
こうして私は凛くんによって体育館を強制退場させられてしまった。
「いやAが怪我してるなんて気付いた?」
「ううん全く分かんなかった」
「だよね。……糸師凛……」
「愛だわあ」
どこか不機嫌な凛くんに俵担ぎされながら私はどうも戸惑っていた。
普通あの場で抱き上げるなら、少女漫画的展開ならどう考えてもお姫様抱っこだし、王子様はもっと甘い言葉を囁いてくれるだろうし。
いや、凛くんは私にとってどんな形でも王子様なんだけど。
「…凛くん、いつから?」
「あ? お前がアホみたいなドジした瞬間から」
「アホ…ドジ……」
口調は物凄く厳しいのに、保健室に着いた瞬間驚く先生を前にめちゃくちゃ優しく下ろしてくれた。
包帯で固定された後、氷を持たされて保健室から追い出される。
ずっと連れ添ってくれていた凛くんは引き戸を閉めた後、流れるように私の後ろに立って腰を持った。
「ちょ、ままま」
「何だ、うるせえ」
「自分で歩ける」
「あ? 安静にしろって大人のいう事が聞けねえのか」
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おそらまめ(プロフ) - 彩華さん» 彩華様、感想長らく気づかず遅くなり申し訳ありません。ありがとうございます。きっと二人、これからも沢山言い合いして、言葉にならない愛を育んで、お互いが明日を生きる理由がお互いになっていくんだと思っています。また機会があればどこかでお会いしましょう! (7月21日 13時) (レス) id: 77433e9bba (このIDを非表示/違反報告)
彩華(プロフ) - 完結から時間経っているとはわかっているんですけど、これだけは言わせてください。めっちゃ好きです!夢主ちゃんも凛君も末長く幸せになって!これからも他の小説での交信頑張ってください。応援しています。 (7月11日 0時) (レス) @page45 id: 2b870d0ab1 (このIDを非表示/違反報告)
おそらまめ(プロフ) - mooさん» moo様、コメントありがとうございます!原作で摂取できない分滅茶苦茶に砂糖煮詰めております(^^)楽しんで頂けたようで何よりです。ご覧頂きありがとうございます。 (6月1日 18時) (レス) id: bb8d3426f9 (このIDを非表示/違反報告)
moo(プロフ) - 糖分過多ー!!面白かったです! (6月1日 3時) (レス) @page45 id: e3fdbdb203 (このIDを非表示/違反報告)
おそらまめ(プロフ) - ルアさん» ルア様、コメントありがとうございます!大切に作ったので、そう言って頂けて作品も作者同様喜んでおります。こちらこそ、作品を応援して頂きありがとうございます! (2023年4月19日 14時) (レス) id: bb8d3426f9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おそらまめ | 作成日時:2023年3月27日 18時