01:きっかけ ページ1
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「お前が居れば、俺の高校生活も楽しくなるかもな」
――あの時の衝撃は、これからの人生できっと忘れられない。
緊張で震えていた筈の心臓は、気付けば私に傅く目の前の王子様に対して震えていた。
雪解けが始まって、雪崩の雪の一片の私は彼の恋の足元に落ちたんだ。
「凛くーーん! お早う世界一!」
「黙れ単細胞」
「えっっ今日もしかして機嫌良い?」
「どう見ても悪いだろバカか?」
私の好きな人であり憧れであり王子でもある唯一の男の子。
クラスは違えどこうして毎日ご尊顔を見る事が出来るのは同じ学校に通える者だけの特権だ。
凛くんの教室で彼の登校するのを待つ時間すらも愛しい。
そしてこうやって元気な姿を毎日見る事が出来るのも只管に嬉しい。
「宇野ー、もうホームルームなるから早よ自分の教室戻れ」
「ああぁー凛くんと離れたくないぃ」
「お前マジで1回殴られねぇと分かんねえか」
彼の机にへばりつけばやたらと嫌な顔して顔を掴まれた。手が大きい。好き。
もう一度彼に手を振って教室を出る。その瞬間から、あの教室に異様にひりついた空気が流れるのはいつものことだ。
「あ、お帰りA。糸師くんとは会えた?」
「勿論、聖地巡礼してきた」
「糸師くんの事神か何かだと思ってる?」
2つ隣の自分の教室に朝礼と同時に滑り込む。
前の席に座る友達に敬礼すれば「毎日よくやるよね」とため息をつかれた。
「"あの"糸師凛相手にすごいよあんたは」
「あの、って?」
「糸師凛といえば、高飛車で朴念仁でわがままの代表じゃん」
「天才でミステリアスで負けず嫌いでかっこいい?」
「最後はもはや幻聴だわ」
再度大きく息を吐いた彼女が頬杖ついて私を見る。
私以外の人たちは、凛くんの事を絶っ対に誤解している。
「……あのさぁ、何でそんなに糸師くんが好きなの?」
「私のヒーローだから」
「はあ?」
「私、受験の時大事な受験票失くしたんだよね」
___3か月前、冬。
世間はバレンタインデーで盛り上がる中私達中3は勉強に明け暮れた末の受験当日を迎えていた。
お腹が痛くなって、でも荷物を会場に置きっぱにするのも不安で、持ち物と一緒にトイレに向かって、もう一度会場に戻るさなかだった。
「……受験票がない……!」
数分前までは確かにあったそれを、私は失くしてしまった。
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おそらまめ(プロフ) - 彩華さん» 彩華様、感想長らく気づかず遅くなり申し訳ありません。ありがとうございます。きっと二人、これからも沢山言い合いして、言葉にならない愛を育んで、お互いが明日を生きる理由がお互いになっていくんだと思っています。また機会があればどこかでお会いしましょう! (7月21日 13時) (レス) id: 77433e9bba (このIDを非表示/違反報告)
彩華(プロフ) - 完結から時間経っているとはわかっているんですけど、これだけは言わせてください。めっちゃ好きです!夢主ちゃんも凛君も末長く幸せになって!これからも他の小説での交信頑張ってください。応援しています。 (7月11日 0時) (レス) @page45 id: 2b870d0ab1 (このIDを非表示/違反報告)
おそらまめ(プロフ) - mooさん» moo様、コメントありがとうございます!原作で摂取できない分滅茶苦茶に砂糖煮詰めております(^^)楽しんで頂けたようで何よりです。ご覧頂きありがとうございます。 (6月1日 18時) (レス) id: bb8d3426f9 (このIDを非表示/違反報告)
moo(プロフ) - 糖分過多ー!!面白かったです! (6月1日 3時) (レス) @page45 id: e3fdbdb203 (このIDを非表示/違反報告)
おそらまめ(プロフ) - ルアさん» ルア様、コメントありがとうございます!大切に作ったので、そう言って頂けて作品も作者同様喜んでおります。こちらこそ、作品を応援して頂きありがとうございます! (2023年4月19日 14時) (レス) id: bb8d3426f9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おそらまめ | 作成日時:2023年3月27日 18時