朝の光、君の証明

”誰か”は僕に危害を加えない。

ただ、当たり前な生活の一つと言っていいくらい、僕の毎日の隣にいた。

　幽霊なのだろうな、とは察しがつく。

それが誰のものかというのは考えたくない。考えなくてもいいや。

　”誰か”はホラー映画で観るような、幽霊らしいことを何もしてこなかった。

…いや、朝のカーテンや扉が開くのは、何だっけ。ポルターガイスト、みたいなアレに当てはまるのかもしれないが、それ以外の…例えば、隙間から恐ろしい眼光で睨んできたりとか、布団を剥いだら青白い顔がぁ…とか、そういうことは一切してこない。姿の見えない同居人という印象が強い。

そんな風だから、”誰か”の目的が何なのか、全く見当がつかなかった。

…幽霊らしいことを頼めば、してくれるのだろうか。

そんな考えに至ったとき、まるで僕の閃きを音にしたように、トースターが ちぃん、と鳴った。

うん、ケチャップは相変わらず悲惨だが、美味そうにできた。

さっき注いだ牛乳の入ったマグカップと、青色のトレーに乗せたパンを持って机に置いた。

片手でパンを持って、かじり付いた。

ぱりっ、といい音が鳴る。チーズが伸びて、それを噛み切る。チーズの少しの甘味と、ケチャップの酸味が合わさっていた。

　朝ご飯を食べながら、僕はこの家の食糧危機について考えている。

といっても、答は簡単。買い物に行けばいい。親から「買い出しに使いなさい」と渡されたお金もある。

だが、行くのが最高に面倒くさい。暑いし疲れるし。でも、(大袈裟な表現だが)このままじゃ餓死ルートまっしぐらだ。

…そうだ。なら、帰った後の楽しみを作ればいいんだ。

パンを一通り胃に入れた僕は、”誰か”に提案を持ちかける。

「…あのさ、僕が買い出しに行っている間に準備してさ、なんか幽霊らしいことしてみてよ」

言った後に「あぁこれ幽霊に提案する内容じゃないな」と思ったが、僕はこの幽霊が危害を加える悪霊的な存在ではないと思っているので、撤回はしなかった。

それどころか、どんな事するんだろうな。と好奇心を高ぶらせている。(調子に乗っている)

　歯を磨いて、寝癖はもう諦めて、服を着替えて。

幾らかお金を財布に入れて、靴を履いた。

「…じゃあ、行ってきます。」