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「聞いちゃった、話してるとこ」
へへ、と耳を抜ける息は
当たらないのにくすぐったくて
「そっか、」
「びっくりしちゃった?」
「や、まぁ……ちょっと」
一瞬触れただけの声に
未だに戻ってこない鼓動
「記憶力には自信あんねん」
ほらね
また、わかんなくなる
「覚えんのも忘れんのもちょー早い」
「そうなんだ、」
「わ。絶対信じてないやつや。ひどー」
「や、信じてないっていうか」
なんていうか、と言葉が濁れば
ほらぁ、なんて不満気な声
ひとつだけ分かってることは
私は紫耀くんのペースに
敵いやしないんだってこと
「パンの名前やって全部覚えてるし、」
「お店の?」
「そ!メロンパンでしょ?クロワッサンでしょ?塩パン、食パン、あんぱん、白あんぱん、えーっと。チョココロネ、フランスパン、ミルクフランス、カルツォーネ、…………あー、お腹空いた」
「すごい、」
しかも、まだまだ続きそう
「で、店長さんが中川拓郎さん」
「ちゃんとフルネームなんだね」
「あったり前やん!」
あれ?、と向こうで唸る声
「やばい、店の名前ど忘れした」
「えぇ?」
店長さんはフルネームなのに
お店の名前忘れちゃうんだ
「あ。私レシートあるかも」
探るお財布のその底に
ラスト1枚の100円玉
…………いいや、入れちゃえ
「あった?」
「あ、うん。あったよ」
取り出すレシートを開けば
”こむぎこ”、の4文字
「あー、」
「まってまってまって、ヒント!最初の1文字」
「えー?最初の1文字はね、”こ”」
「”こ”?いやっ、”め”、じゃなくて?」
「”こ”。ちなみに最後も ”こ” だよ」
えぇ!?、と息がひっくり返って
これは多分覚えてないな
「や。”め” しか出てこないんやけど」
「んー、”め” じゃないんだけどなぁ」
「えぇぇ?ほんまに ”め” しか思いつかへん!」
”め”、って。掠りもしてないし
どこから出てきたんだろうか
「じゃあ当ててみて?」
「ええの?いくよ?……メレンゲ!」
「ふふ、はずれー」
「うそぉ!?なんで?や、メレンゲやって!」
だから違うって言ったのに
紫耀くんって
多分、どこかちょっと頑固だ
「正解、言っていい?」
「えー?俺的にはメレンゲが正解なんやけど」
「”こむぎこ”、でしたー」
「っあー!そうだ、こむぎこ!うっわぁ、」
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ふとん(プロフ) - はるかさん» はるかさん、ありがとうございます!ようやく折り返しと言えるところまできました…最後まで頑張りますので、お付き合いいただければ幸いです! (2017年9月21日 23時) (レス) id: 1df4f5ed05 (このIDを非表示/違反報告)
はるか(プロフ) - ここにきてこんなに切ない展開ってさすがです…続きがすごく気になります!! (2017年9月20日 2時) (レス) id: 66715550c8 (このIDを非表示/違反報告)
ふとん(プロフ) - つかささん» つかささん、ありがとうございます!最後まで自分の思い描いた世界を表現できるよう頑張りますので、これからもよろしくお願いします。 (2017年8月31日 9時) (レス) id: 1df4f5ed05 (このIDを非表示/違反報告)
つかさ(プロフ) - この作品を読んでいるとすごく不思議な感覚になります。更新楽しみにしてます。 (2017年8月28日 10時) (レス) id: ad87999c23 (このIDを非表示/違反報告)
りこ - 紫耀ちゃんが、いつ出てくるか楽しみです! (2016年12月19日 8時) (レス) id: a7ce410caa (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ふとん | 作成日時:2016年12月18日 21時