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「ナポリタンあったらちょーだい」







ほんの一瞬視線が絡めば
すぐ落ちる声にほどかれて

その眼差しは、グラスの中へ







伏せた瞳に被さる睫毛は

指を追いピクリ上下して







エプロンの胸元に付けられた
プレートには”平野”の文字









…こんなイケメンがいたなんて









挨拶くらいはしたはずなのに
探る記憶は見つからない







まぁ、結構慌ただしかったし






それに

店長さんの話を聞くだけで
いっぱいいっぱいだったから

周りが見えてなかったかも








ずっとこんな人の隣で
お皿を洗っていたなんて









ぼんやりしばらく見惚れていれば


何も返せぬままの私に
もう1度その口が動く






「ナポリタン」



「…ナポリタン」







わけもわからず復唱すれば
ひょいとその腕が伸びてきて








「全部落とすん、時間かかるやろうから」







オレンジの線が残るお皿が
その手に1枚奪われる







「わ、」






思わずポツリと洩れる声




何回かスポンジを擦るだけで
あっさり色が流れ落ちて






私があんなに時間をかけても

しぶとく残り続けたのに









手のひらの厚さが手伝って
そう見えるだけかもしれないけど

力を込める様子もない








「後でコツ教えたげる」








呆気にとられる私を横目に
細まる目が髪に紛れて

浮かぶ涙袋が急に、その瞳を幼くさせる









…ズルい









お願いしまーす、という声とともに
またせわしなさが訪れて

クシャリ泡を作ったはいいものの
戻す思考は少し熱い








さっき盗み見した時は
手元しか見てなかったから

特に違和感もなかったけれど








いまさら脳に焼き付いた姿は
その手の動きとミスマッチ








瞼を掠める茶色い髪に
緩くまくられたシャツの袖


そこから伸びる筋の出た腕は
器用に指先を操って








人はみかけじゃないなぁ、なんて
くるり水を回してみれば



ちょっと

くすぐったいような









朱色のソースが残るお皿を
言われた通り、右隣へ置いて


チラリ盗んだ横顔は





また

くすぐったさを残した

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ふとん(プロフ) - はるかさん» はるかさん、ありがとうございます!ようやく折り返しと言えるところまできました…最後まで頑張りますので、お付き合いいただければ幸いです! (2017年9月21日 23時) (レス) id: 1df4f5ed05 (このIDを非表示/違反報告)
はるか(プロフ) - ここにきてこんなに切ない展開ってさすがです…続きがすごく気になります!! (2017年9月20日 2時) (レス) id: 66715550c8 (このIDを非表示/違反報告)
ふとん(プロフ) - つかささん» つかささん、ありがとうございます!最後まで自分の思い描いた世界を表現できるよう頑張りますので、これからもよろしくお願いします。 (2017年8月31日 9時) (レス) id: 1df4f5ed05 (このIDを非表示/違反報告)
つかさ(プロフ) - この作品を読んでいるとすごく不思議な感覚になります。更新楽しみにしてます。 (2017年8月28日 10時) (レス) id: ad87999c23 (このIDを非表示/違反報告)
りこ - 紫耀ちゃんが、いつ出てくるか楽しみです! (2016年12月19日 8時) (レス) id: a7ce410caa (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ふとん | 作成日時:2016年12月18日 21時

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