30 ページ30
.
「ね、教えて?」
「大した事じゃないし、」
「ならええやん!な?」
紫耀くん、意外としぶといな
なんだかまるで焦らしてたみたいで
余計に言い出しにくくって
「鮭、好きなの?」
なんて
矛先をズラしにかかるけど
「好き!」
……失敗した
「俺さ?めっちゃ上手いねん、魚食べんの」
顔が見えなくてよかった、と
初めて電話に感謝しながら
「もうな、骨とかちょーキレイに取って。完璧」
「……そうなんだ」
「あー、信じてないでしょ」
けろり続ける紫耀くんをよそに
まだ
声もろくに出ないまま
もう、ベタ惚れもいいところだ
「こう見えても器用やねんで?」
「そう言われても」
「あ。そっか、見えてないやん!」
声だけじゃ分からんよなー、なんて
あっけらかんと続いた言葉は
喉元へと引っかかるけど
……考えるのは、後にしよう
とりあえず
今は、初めましてなんだから
「どんな感じなの?」
たぶん、これで合ってるはず
「んーとね、金髪!」
「え、金髪?」
「そ。さっき染めたばっかやけどね」
さっき、って
「めっちゃいい天気だからさー、染めたくなっちゃって」
「……それだけで?」
「そそ。太陽ってかっこいいなーって思って」
「太陽、」
相変わらずな紫耀くんの言葉は
とらえるだけでも一苦労
「色抜くの、めっちゃ時間かかってさ。まぁ寝ちゃうよね」
「そんな時間かかるんだ」
「そー!もうさ、やっと染まったーって思ったら、ほぼ夕方なの」
せっかく染めたのにー、なんて
ほんの少し遠くなった声は
きっとその髪を弄ってて
これなら赤のがよかった!、と
ちょっぴり不満気なその様子は
姿に似合わず子どもっぽい
「金髪、いいと思うよ?」
可愛い、なんて思い始めたら
もう引き返せなくなるのに
くすぐったさは抜けなくって
「……夜になれば月になれるし」
キザかなぁ、なんて思いながらも
一応なぐさめてあげれば
「あぁ、月かぁ!」
ふふ、とこぼれたその音が
またくすぐったさを残す
「ええな、月」
似合いそう、なんて声が洩れると
紫耀くんはクスリ息を揺らして
吸い込まれた空気の中で
そのままプツリ音が切れた
1504人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「平野紫耀」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ふとん(プロフ) - はるかさん» はるかさん、ありがとうございます!ようやく折り返しと言えるところまできました…最後まで頑張りますので、お付き合いいただければ幸いです! (2017年9月21日 23時) (レス) id: 1df4f5ed05 (このIDを非表示/違反報告)
はるか(プロフ) - ここにきてこんなに切ない展開ってさすがです…続きがすごく気になります!! (2017年9月20日 2時) (レス) id: 66715550c8 (このIDを非表示/違反報告)
ふとん(プロフ) - つかささん» つかささん、ありがとうございます!最後まで自分の思い描いた世界を表現できるよう頑張りますので、これからもよろしくお願いします。 (2017年8月31日 9時) (レス) id: 1df4f5ed05 (このIDを非表示/違反報告)
つかさ(プロフ) - この作品を読んでいるとすごく不思議な感覚になります。更新楽しみにしてます。 (2017年8月28日 10時) (レス) id: ad87999c23 (このIDを非表示/違反報告)
りこ - 紫耀ちゃんが、いつ出てくるか楽しみです! (2016年12月19日 8時) (レス) id: a7ce410caa (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ふとん | 作成日時:2016年12月18日 21時