明日も君と、恋をしよう

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.








「もしもーし？」








……あぁ、ダメだ









もう

この声を聞けば







それだけで








浮かんでくれるはずの言葉も


絡んでいたはずの思考も









全部、


みんな、


何もかも、







飲み干されては、消えてしまう









「あれ、聞こえてる？もしもーし？」

「……はい、」

「あ、聞こえてた」







けど






「んと、初めまして？」







なにかを考えることさえなく







「うん。初めまして」







言葉だけが先を行くから







「ん、初めまして」







それで、よかったかもしれない






「で？」

「え？」

「あれ、なんか話あったんちゃうの？」

「あー……、えっと」







上手い理由を繕おうと
遅い頭が動き出せば






「なになに、イタズラ電話的な？」


「……うん、そんな感じ」


「わ、正直」






へんなの、なんてくすぐる声が
またそれを止めにかかるから






「ちょうどよかった。誰かに話したいことあってん」






流れるままのペースに乗る






「そっからさ、空、見える？空ってゆーか、雲？」

「見えると思うけど、」






見てみて？、と促す声に

右手に受話器を持たせたままで
覗き込むように見上げれば








「わ、」






.






飲む息と続かない言葉






.






「ね。すごい色でしょ」

「うん、……すごい、綺麗」







置き去りにされる太陽が
通り過ぎていく雲を色付けて







「なんかな？この空さ、」







それを、

また風が引き伸ばす









「シャケみたいやない？」





「シャケ？」

「そそそ。あ、サーモンにも見えてきたかも」









どっちのがええかなぁ、なんて
のんきに伸びては唸る声







……もうちょっと、他に例えはなかったのか








「腹減るわぁ〜」






雲が巡る空とうらはらに
ロマンチックさの欠片もない





いいや

感性が豊かってことにしておこう








「な、どっちやと思う？」

「どっち、って」






そんなこと、言われたって






「シャケもサーモンも鮭だよね？」

「え？しゃけ、しゃ……、え、いまなんて言った？」

「や、なんでもない」

「それはあかんて、気になるやん！」







教えてー、としつこい紫耀くんに


膨らんだ頬を思い出しては
つい口元が緩んでしまう

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