明日も君と、恋をしよう

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ぐるぐる回るだけの声に
こらえたアクビで滲む視界





『でー、これ。僕の書き方ね、普通の教科書や参考書と逆ですから。気を付けてね、反対だから。よく考えて使ってね、』





まだ9時半だっていうのに





『いや、ね？本来こっちが正しいんですよ、本来は。ただああいう本はね、理論性より利便性を重視するんですよ。困ったもんでね、まったく』





教授の勢いは止まらない






この解答は来週提出ね、と
サラリ飛び出した発言に

一気に上がるいくつもの頭が
キョロキョロとまわりを探って






「A、A、今どこって言った？」

「ん、ここ。29ページの例題」






近寄ってきた舞美の目の前に
開いた教科書を差し出せば





「うっわ、マジか。ありがと！」





あ、と付け足された声に
またその肩がそばに寄って




「後でノート写メらせて！」




声を出さずに顎だけ引くと
ありがと、と元へ戻る









大学は人生の夏休み、

なんて






誰が言ったか知らないけれど






そんな言葉は

大ウソだ









『あ、これね。君たちのうちの半分くらいはね、試験に出すと間違えるんですよ。半分は。まったく不思議でしょうがない』





ほら、また始まった






当分進みそうにない板書に
ノートへとスマホを乗っけて

光ってた通知を開けば





”あ、あそこ行きたい”
”Aちゃんがバイトしてたとこ！”





画面に映る志保さんの返事に
こっそりと指を滑らせて

了解です、とそれに応えると
あのわんこがピョコリと跳ねる






やっぱりこのスタンプ、

岸くんっぽい





ちょっと視線を走らせれば
コクリ揺れる頭が見えて


志保さんに言っちゃうぞー、なんて








真っ黒なその髪を見てるうちに
指が画面を滑れば浮かぶのは


制服姿のあの写真






別に頼んだわけでもないのに
岸くんが送りつけてきて






……まぁ、保存してる私も私だ







黒髪、やっぱ格好良いな


ストンと素直な向きの毛先は
耳に着くかギリギリくらい





ちょっとだけアップなんかしてみれば

晒されている日に焼けた腕は
くっきり筋を浮かべていて







すっごいモテてたんだろうなぁ







……ていうか、

ふわつく髪をモノにする今だって
絶対モテないわけがない






なんて






余計なことが巡り出す前に
ぬるい水を喉に流した

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