【刀剣乱舞】生まれ育った本丸、何かブラックにされたらしいんでちょっと行ってきます。

＃四十三振り目 ページ45

・[NO,side]



カタリ...、カタリ、と。


その足音は、非常に緩やかながら確かにここに向かってきていた。
刀剣男士、誰の物でもない暗い闇を引きずる音。

次第に大きくなるにつれ、周りの空気がそう＿＿＿、


"死んでいく"。


これが果たして人間と呼べる存在なのか。
こうも周りに影響を与えながら生きる存在が、他にいるのか。

...大倶利伽羅の固く握られた拳が、微かに震えた。


＿＿＿そして。

閉じられた襖に、ゆっくりと女性のシルエットが浮かび上がった。




「...この部屋には、誰がいたんだっけ...？」

「.......」




聞く人が聞けば、「可愛らしい」と思う声かもしれない。
そう思えない理由は、それに含まれる感情がまったく感じられない所にある。

黙ったままの大倶利伽羅に、シルエットは不可解な笑みを漏らし、襖に手をかけた。




「...いるんだったらちゃんと返事しなきゃダメでしょ...、ねぇ？伽羅ちゃん？」

「.....あぁ、すまない。まどろんでいた」




開けられた、襖。

女性の＿＿＿、審神者、影華の姿が露わになる。



何もかもが、黒。
見た目から、纏う雰囲気まで、全てが黒。

影に徹する＿＿、

いや、影と言うには、その存在は既に大きくなり過ぎていた。




「清光から聞いたわよ？あなた達、私がいない間に喧嘩したんだってね...」

「...光忠の邪魔をしようとしたからだ。俺に非はない」

「うふ、私、あなたのそういうところも好きよ」




淡々と答える大倶利伽羅に対し、影華はふんわりと笑う。




「じゃあ、他の三振りはどうしたのかしら？ここにはいないようだけど...」

「知らん。俺には関係ない」

「...ふーん......」



＿＿＿正直、これで彼女を巻けるとは思っていない。
しらを切っても駄目なようなら、...それでも手はいくらでもある。

さて、どうするか。

そんな思いはおくびにも出さず、大倶利伽羅は言い訳を考え始める。


...が。




「あなたの事は、お気に入りだから許してあげる。でも、私のいないところでそんな事をやってもらっても困っちゃうから...」

「？＿＿＿ッ！！」

「"お仕置きは、しないとね"？」




いつの間にか、彼女の右手が大倶利伽羅の左胸＿＿、

"心臓に"置かれていた。




「ぐっ...、あ"ぁッ！！？」

「うふ...、良い声...、あなたは私だけの物...、誰にも渡しはしないわ...」




抑揚のない声。
歓喜を滲ませている。

気づいた時には、もう遅かった。

トン、と軽く胸を押され。


＿＿＿波を打って流れ込んできたのは、あの、禍々しい霊力その物だった。




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