【刀剣乱舞】生まれ育った本丸、何かブラックにされたらしいんでちょっと行ってきます。

＃三振り目 ページ5

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てくてく、てくてく、歩いていく。
行くあても、一応ある。

学校で嫌な事があったり、理由はなくとも一人になりたくなった時＿＿＿＿、

そう、今のような心境になった時は、私はよく、家からほど近い川べりの土手に向かう。


そこからは都会のビルが見えて、
その前に立ち並ぶ木々が見えて、
そして悠々と流れていく大きな川が見える。

...川に限らず、水に触れると人の心は落ち着くと言うが、私は特にその傾向が強いらしい。



『...ふー...』



いつの間にか早足になっていたらしい歩調を緩め、私はようやく辿り着いたお気に入りの場所に腰を下ろした。


ストンッ、と体の力を抜き、体育座りで顔をうずめる。


漂う草の匂いと、澄んだ水の匂い。
大きな街からさして離れていないにも関わらず、ここの川は本当に綺麗だ。

...たまには苦い思いを洗い流し、空っぽにするにもありだと思う。



＿＿＿小さい頃。
幼稚園や小学校で嫌なことがあると、私は決まって本丸の裏山に足を運んだ。




険しい岩山もあるし、滑りやすい場所もある。

そこを何とか小さな体で抜けていくと、山から本丸が一望できる小高い丘に出るのだ。



いつもは走り回ってもまったく狭く感じない本丸が、とても小さく見えた。
その向こうには、一度も行った事のない草原と、裏山よりも遙かに大きな山岳が広がっていて。


自分って、世界から見ればこんなにちっぽけなんだ。
...こんなちっぽけな事に悩んでた自分って、バカみたい。


そう思わせてくれるほどに、自然は雄大だった。




［コラ、Aちゃん！こんなところにこんな時間で一人で出歩いたら危ないじゃないか！］

［しっかし、もうここまで登れるようになったのかお前は！凄いなぁ！］

［...心配かけさせるな。放っておく主も主だが］

［今度はみんなで、ここに来れると良いな！］




で、やっぱり迎えは来る訳で。
強制的に本丸に連れられて帰って来てみれば、やっぱり説教が待っているのだ。




［だから、何回も言って聞かせているだろうA！俺は良いんだ、もしもAに何かあったら、主が、あ・る・じ・が心配するだろう！？］

［悪気はないとしても、人に心配をかけてはなりませぬぞ！A！］

［心配する私達の身にもなりなさい、...お説教は好きではありませんが］





それでも最後は、笑って許してくれた。


懐かしく、哀しい思い出。

蘇ることはない、鮮やかな思い出だ。




『...今頃何してんのかな。あいつら』




独り言。
今日に限って、本音は溢れるばかりだった。



『＿＿＿会いたいなぁ...』





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