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#二十九振り目 ページ31





これだけでももう十分なのに、実はもう一人残っている。

さぁ、最後は君の番だよね___。
そう言うかのように、光忠は私からスッ、と離れた。


視界が開ける。

残っていたのは、誰であろう大倶利伽羅である。


...苦虫を噛み潰したような顔。

私の横で、鶴丸と太鼓鐘は笑いを噛み殺していた。




「おい...、伽羅坊...!ふひっ、さっさとやれって...!」

「そんなところで突っ立ってるだけじゃ、伊達の名に泥を塗ることになるぜ!伽羅!」

「......っ、クソ...!」




一匹竜王、視線をずらし光忠に助けを求めるも、当の本人は微笑を浮かべたまま。

もはや袋の鼠___。
諦めがついたのか、大倶利伽羅はキッ、とこちらを睨み見据えた。

そのまま、肩を怒らせこちらに接近。




「A!」

『なっ...、な、何...?』

「...お前がここに帰って来るのを心待ちにしていたのは、俺たちだけじゃない。
今の主がこの本丸を乗っ取ろうとした当初は、全員に記憶があったからな。加州も長谷部も、誰よりお前のことを待っていた」

『........』

「詳しい事情は後で説明するとして、...家族同然だったお前にでさえ刀を向けてしまった奴らの事を、どうか恨んでくれるな」




___奴らも、望んであんな風になった訳じゃない。


大倶利伽羅はそこで一度言葉を切り、一瞬辛そうに顔を歪ませる。

今まで共に戦ってきた戦友___。
彼らが少しずつ壊れていくのを、見ていることしか出来なかった辛さが、滲んでいた。


"馴れ合うつもりはない"。

口ではそう言っていても、仲間想いに変わりはない彼にとっては、相当の苦痛だっただろう。




「だが、それとこれとは話が違う。...A」

『......わ』

「"この本丸に帰ってきてくれて、ありがとう"。...でかくなったな」




ぽすっ、と頭に乗せられたのは、
大倶利伽羅の大きな手。

驚きで目を見開く。

___私は反射的に、顔を、上げる。


お恥ずかしいことに、だいぶ狼狽えた私のことを見て。

ふっ...、と。

ほんの少しだけ、彼は__。


竜は、笑った。


最後に会った日は、こちらが見上げないと目を合わせられないくらい違った身長。

今でも私の方が小さいけれど、
それでも、もう目線はほとんど変わらない。

...それは今まで流れていった時間を、明に暗に、はっきりと表していた。




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*紫苑*(プロフ) - わざわざこちらまで、ありがとうございます!少しでも多くの読者様に見てもらえると、やっぱり嬉しいものですね(*'ω'*)占ツクの中にも、色々な考え方があるという事ですかね...。気にする必要はないと思いますよ!お互いに、頑張っていきましょう!!(^^)! (2018年10月20日 10時) (レス) id: 9bd0eaa6f6 (このIDを非表示/違反報告)
零架(プロフ) - 私の作品でのコメントありがとうございます!紫苑さんの作品も是非読みたいなと思い、やってきました!それと、私の作品の方の紫苑さんとの会話の上のあれは気にしないでくださいね。最近なんか荒らされてて... (2018年10月16日 21時) (レス) id: 93f581e909 (このIDを非表示/違反報告)
*紫苑* - 四季さん» コメントありがとうございます!ブラック本丸のブラック審神者ということで、姿から雰囲気まで"闇"満載です(/ω\)作者一番の推しである伽羅ちゃん追い詰めて、この審神者に一切の手加減しちゃいけないな...!と、我ながら気合入れました(笑)ぜひご期待ください! (2018年9月1日 20時) (レス) id: 9bd0eaa6f6 (このIDを非表示/違反報告)
四季 - え、なんなんすか?このクズ審神者。早くこいつが倒されるとこ見てえ…。更新頑張ってくださいね!ホント大倶利伽羅傷つけた時点でブッチーンっていっちゃてるんで、最後どうなるか気になります…。楽しみにしてます! (2018年8月29日 16時) (レス) id: ae7acc3881 (このIDを非表示/違反報告)
*紫苑* - 慶花さん» ブラック本丸要素は上手く出せないんですけど、夢主ちゃんはこれでもかというほど、序盤で一気に追い詰めましたね(笑)その分、伊達組の登場で緩和させたつもりだったんですけど...!しんどいのがブラック本丸の醍醐味ですから!これからもぜひお楽しみください! (2018年8月25日 12時) (レス) id: 9bd0eaa6f6 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:*紫苑* | 作者ホームページ:http://twitter.com/wakagi116  
作成日時:2018年7月5日 17時

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