409話 ゼロの執行人 ページ10
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5月1日。
本来ならあの場所で東京サミットが行われるはずだった日だ。
会場は変わったが、サミットは予定通り行われるらしい。
俺はコナンたちと共に、東京地方裁判所に来ていた。
公判前整理手続きを行っている橘弁護士を待っている間、俺はコナンと証拠申請された資料について壁に寄りかかりながら話していた。
昨日の夜、コナンから約束どおり証拠申請された資料の写真が送られてきた。
「ひとつ、気になるのがあったんだ」
『ガラス片でしょ?俺も気になった』
資料にあった、黒いガラス片。
きっと、昨日の盗撮中、コナンが言っていたどこかで見た気がするというのはアレのことだったんだろう。
あれはきっと、犯人しか知らない本当の発火物である圧力ポットの一部。
それを証拠として申請してしまった。
そうなると犯人はおのずと見えてくる。
でも、一体どうして…?
『あの資料作ったの、誰だっけ?』
「確か、日下部検事だよ」
『あの爆破って、何が原因だったっけ?』
「え?警察は高圧ケーブルだって言ってたけど…」
コナンはまだ気づいてない、か。
じゃあまだ何も言えないかな。
「Aさん、本当は何か気づいてるんじゃないの?」
『俺は何も言えない。ただ、導いてあげる。たぶんあのガラス片、君も一度見たものの一部だよ』
「え?」
今俺から言えるのはこれだけだ。
あとは自分で気づいてよ、探偵くん。
そのとき、日下部検事と橘弁護士が廊下の角から現れた。
「境子先生!」
蘭が橘弁護士に駆け寄った。
俺とコナンの横を通り過ぎる日下部検事。
チラリと彼の様子を窺う。
彼は入力音とともにスマホのロックを開いた。
その音と指の動きで、暗証番号を把握した。
【88231】。
誕生日ではないだろうし、変わった暗証番号だ。
コナンも暗証番号までは気づかなかったようだが、入力音の違和感に気づいたらしく足を止めた。
だがすぐに気にすることなく橘弁護士のもとに向かう。
橘弁護士は貰った資料を妃さんに渡した。
「あ、すみません。ちょっと読んでてください。お手洗い行って来ます」
突然そう言って橘弁護士はトイレとは真逆の方へ走っていってしまった。
その怪しい行動に目を光らせる。
犯人は察しがついたが、共犯がいないとも限らない。
彼女もまだ十分怪しいのだ。
「あ、境子先生!トイレ反対側!境子先生!」
コナンが呼び止めるが、彼女は足を止めずに角を曲がって行ってしまった。
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096 - いおりさん» コメントありがとうございます!人生の楽しみだなんて、嬉しい限りです!これからも楽しんでいただけるよう頑張ります!! (2019年8月10日 19時) (レス) id: 674cb05958 (このIDを非表示/違反報告)
いおり - 黒瀬くんと降谷さんの日常を見てニヤニヤしてます。この物語は今や、私の人生の楽しみになっています。こんな物語を書ける096さんはすごいですね。これからもお体にお気をつけて、更新頑張ってください。 (2019年8月9日 23時) (レス) id: 50154c1ba9 (このIDを非表示/違反報告)
096 - basuke07さん» コメントとリクエストありがとうございます!ずっと読んでいただけて嬉しいです!それも面白そうですね…!ぜひ機会がありましたら構想を練って書いてみたいと思います! (2019年8月6日 21時) (レス) id: d9ca70487a (このIDを非表示/違反報告)
basuke07(プロフ) - 一番最初から今までずっと読んでますとても面白いですリクエストみたいなものなんですが夢主さんがまた警察の公安になる番外編的なものを作って欲しいです (2019年8月6日 19時) (レス) id: 7f07f3e8a0 (このIDを非表示/違反報告)
096 - 裕さん» コメントありがとうございます!長いのに、ここまで読んでくれたのですね…!お疲れ様です!これからも頑張りますので、よろしくお願いします! (2019年7月20日 22時) (レス) id: d9ca70487a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:096 | 作成日時:2019年7月13日 14時