444話 ページ45
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東京サミットの事件から数日たったある日。
『…………』
「……アンッ!」
玄関を開けた先にいた白い生き物を見て俺は固まっていた。
「どうした?」
後ろからやってきた零さんが俺の視線の先を追う。
「あ、一晩中ここにいたのか…」
零さんは溜息混じりに声を漏らす。
『何?この犬…』
嬉しそうに尻尾を振っているのはどこから見ても犬だ。
「いや…少し前にトレーニングをしていた河川敷で会ったんだ。それで、昨日修理した車を洗車していたときにまた会って…そのままついてきたみたいだな…」
『完全に懐かれたってわけね』
零さんはしゃがみこんで犬を撫でる。
「残念だが、君を飼うことは出来ない。そもそもここは、ペット禁止――…」
といってるそばから同じ階の住人がペットの犬を連れて部屋から出てきた。
『…ではなかったみたいだね。……その子、足怪我してる』
犬の左前足が血で滲んでいることに気づく。
「本当だ。化膿は…していない…。でも念のため洗ってワセリンを…」
『そんなことしたら、もっと懐かれるよ?』
「でも、放ってはおけないだろう?」
『…はいはい。優しいですね』
俺は一度部屋に戻り、水を張った桶とワセリンをもって玄関先に戻った。
「ありがとう」
それを受け取って犬の足を手当てしだす零さん。
『飼うの?』
「まさか。ほぼ家にいられないのに、生き物を飼うなんてできないだろう?」
『…そう。…そろそろ行かないといけない時間じゃない?』
時計を確認して時間を伝える。
「ああ。…これでよし」
手当てを終えて犬を撫でた後零さんは立ち上がる。
「じゃあ行ってきます。君も、もうついてこないようにね」
俺と犬にそう言ったあと、零さんは仕事に向かっていった。
「アンッ!」
その後を追うように、犬も走っていってしまった。
あれは完全に懐かれてしまっているけど…大丈夫なのか…?
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096 - いおりさん» コメントありがとうございます!人生の楽しみだなんて、嬉しい限りです!これからも楽しんでいただけるよう頑張ります!! (2019年8月10日 19時) (レス) id: 674cb05958 (このIDを非表示/違反報告)
いおり - 黒瀬くんと降谷さんの日常を見てニヤニヤしてます。この物語は今や、私の人生の楽しみになっています。こんな物語を書ける096さんはすごいですね。これからもお体にお気をつけて、更新頑張ってください。 (2019年8月9日 23時) (レス) id: 50154c1ba9 (このIDを非表示/違反報告)
096 - basuke07さん» コメントとリクエストありがとうございます!ずっと読んでいただけて嬉しいです!それも面白そうですね…!ぜひ機会がありましたら構想を練って書いてみたいと思います! (2019年8月6日 21時) (レス) id: d9ca70487a (このIDを非表示/違反報告)
basuke07(プロフ) - 一番最初から今までずっと読んでますとても面白いですリクエストみたいなものなんですが夢主さんがまた警察の公安になる番外編的なものを作って欲しいです (2019年8月6日 19時) (レス) id: 7f07f3e8a0 (このIDを非表示/違反報告)
096 - 裕さん» コメントありがとうございます!長いのに、ここまで読んでくれたのですね…!お疲れ様です!これからも頑張りますので、よろしくお願いします! (2019年7月20日 22時) (レス) id: d9ca70487a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:096 | 作成日時:2019年7月13日 14時