433話 ゼロの執行人 ページ34
「すべての始まりは、NAZU不正アクセス事件だよね」
「ええ。公安から、容疑者を有罪にするよう言われて、調査を進めてたわ。そんな時、その容疑者が出入りするゲーム会社で彼が捕まった。彼がなぜそんなことをしたのか、わからなかった。彼を助けるよう、公安警察に必死に頼んだ。でも彼は自 殺した」
橘弁護士はこちらに背を向け、肩を震わせる。
「公安警察を恨んだわ。事務所を畳み、協力者として復讐の機会を狙ってたの」
「そんなときに、小五郎のおじさんを無罪にするように弁護を命じられたんだね」
「ええ。なぜ公安警察が彼を無罪にしたいのか分からなかったけど、それなら有罪にしてやろうと思った」
「無関係な人達を巻き込んで!?」
「仕方なかったのよ!」
コナンの言葉に橘弁護士はこちらを振り返る。
「それがまさか…公安警察の保護で生きていたなんて…。知っていたら、こんなことには…」
公安の協力者になって、人生を変えられた人達を多く見てきた。
彼女もその一人。
だけどこれも日本を守るための仕事の一つ。
いちいち同情なんてしていられないのだ。
これが俺たちの正義。
多少の犠牲をもってしても、守らなくてはならないものがある。
「橘境子。貴女を公安警察の協力者から解放する。…いいな?風見」
「違法な作業は自らカタをつけなきゃならない。それが公安でしたね」
風見さんはメモ用紙を一枚切り取って、橘弁護士に近づいた。
「羽場はここにいる。貴女はもう自由だ。彼に会いたいなら、我々は止めな――…」
パンッと乾いた音が響く。
「思い上がるな!」
橘弁護士が風見さんの手を叩いていた。
白い紙が、風に舞って飛んでいく。
「あんたの協力者になったのも私の判断!あんたを裏切ったのも私の判断!彼を愛したのも私の判断!私の人生全てを、あんたたちが操っていただなんて思わないで!!」
叫びきった後、橘弁護士は息を切らし、屋上の出口へ向かっていく。
「……さよなら」
《…境子》
コナンの持っていたスマホの画面が真っ暗になり、去っていく橘弁護士の背中を映した。
「…どんなに憎まれようと、最後まで彼女を守れ。それが…」
「我々、公安です」
風見さんは力強い目で、橘弁護士の後を追って屋上から出て行った。
屋上に残ったのは俺たち3人。
ここはもう安全だけれど…。
嫌な胸騒ぎは依然として消えていない。
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096 - いおりさん» コメントありがとうございます!人生の楽しみだなんて、嬉しい限りです!これからも楽しんでいただけるよう頑張ります!! (2019年8月10日 19時) (レス) id: 674cb05958 (このIDを非表示/違反報告)
いおり - 黒瀬くんと降谷さんの日常を見てニヤニヤしてます。この物語は今や、私の人生の楽しみになっています。こんな物語を書ける096さんはすごいですね。これからもお体にお気をつけて、更新頑張ってください。 (2019年8月9日 23時) (レス) id: 50154c1ba9 (このIDを非表示/違反報告)
096 - basuke07さん» コメントとリクエストありがとうございます!ずっと読んでいただけて嬉しいです!それも面白そうですね…!ぜひ機会がありましたら構想を練って書いてみたいと思います! (2019年8月6日 21時) (レス) id: d9ca70487a (このIDを非表示/違反報告)
basuke07(プロフ) - 一番最初から今までずっと読んでますとても面白いですリクエストみたいなものなんですが夢主さんがまた警察の公安になる番外編的なものを作って欲しいです (2019年8月6日 19時) (レス) id: 7f07f3e8a0 (このIDを非表示/違反報告)
096 - 裕さん» コメントありがとうございます!長いのに、ここまで読んでくれたのですね…!お疲れ様です!これからも頑張りますので、よろしくお願いします! (2019年7月20日 22時) (レス) id: d9ca70487a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:096 | 作成日時:2019年7月13日 14時