411話 ゼロの執行人 ページ12
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今日は雨が降りそうだったため、バイクは持ってこなかった。
すでに雲行きは怪しくなっており、今にも雨が降り出しそうな曇天だ。
俺とコナンは警視庁の近くの公園にいた。
『ねぇコナンくん。俺はもう公安の人間じゃないんだから、こんなのバレたら一発アウトなんだよ?』
公園内にある東屋の椅子に座りながら、柱に寄りかかり捜査会議の盗聴を始めようとする少年の背中に投げかける。
「大丈夫だって。Aさんのバックには強い後ろ盾があんじゃねぇか」
零さんのことだろう。
その零さんにバレるのが一番怖いんだよ…。
「全部じゃないけど、もうおおよそ解決してるんだろ?オメーの中では」
説得は無駄だと悟り、渋々俺も足を組み、メガネをかけた。
ピッと作動させると、風見さんの声が聞こえてくる。
《我々公安部が調査した結果、爆発現場への不正アクセスにNorが使われていたことが分かりました》
…Nor?
聞きなれない単語に、音声に集中する。
《IPアドレスを暗号化し、複数のパソコンを経由することで辿れなくする、ブラウザソフトです》
似たようなのを、前の世界で捜査した記憶がある。
確か、【Tor】だ。
過去に、犯人がインターネットの電子掲示板を介して、他者のパソコンを遠隔操作し、これを踏み台として襲撃や殺人などの犯罪予告を行ったサイバー犯罪事件があった。
Norは、そのTorをもじったものだろう。
おそらく、性能はほぼ同じ。
《Norの匿名性は解除できないのか?》
微かに、渋い男性の声が聞こえた。
誰の声だろうか…?
《原則的にできません。ただ、Norブラウザに構成ミスやバクがあれば、ユーザーを特定できる可能性があるそうです。逆に言えば…、犯人のNorブラウザにこちらから脆弱性を作れば、追える可能性が出ます》
前の世界でもTorを悪用した事件は多くあった。
見えない相手を捕まえるのは、まさしく頭脳戦なのだ。
《現在我々公安部でサーバーを辿り、ユーザーが特定できる可能性を探っています。……すみません、召集がかかりました。一時退席します》
…召集?
零さん、だろうか…と思いながらもメガネを外したときだった。
「捜査会議の盗聴かな?」
突然聞こえた声に心臓が跳ね上がる。
コナンも顔色を変えて振り返った。
この人に気配を消されると、本当に気づけない。
「なっ…なんでここが…!」
君のスマホから全部筒抜けなんだよ…、と教えてあげたい。
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096 - いおりさん» コメントありがとうございます!人生の楽しみだなんて、嬉しい限りです!これからも楽しんでいただけるよう頑張ります!! (2019年8月10日 19時) (レス) id: 674cb05958 (このIDを非表示/違反報告)
いおり - 黒瀬くんと降谷さんの日常を見てニヤニヤしてます。この物語は今や、私の人生の楽しみになっています。こんな物語を書ける096さんはすごいですね。これからもお体にお気をつけて、更新頑張ってください。 (2019年8月9日 23時) (レス) id: 50154c1ba9 (このIDを非表示/違反報告)
096 - basuke07さん» コメントとリクエストありがとうございます!ずっと読んでいただけて嬉しいです!それも面白そうですね…!ぜひ機会がありましたら構想を練って書いてみたいと思います! (2019年8月6日 21時) (レス) id: d9ca70487a (このIDを非表示/違反報告)
basuke07(プロフ) - 一番最初から今までずっと読んでますとても面白いですリクエストみたいなものなんですが夢主さんがまた警察の公安になる番外編的なものを作って欲しいです (2019年8月6日 19時) (レス) id: 7f07f3e8a0 (このIDを非表示/違反報告)
096 - 裕さん» コメントありがとうございます!長いのに、ここまで読んでくれたのですね…!お疲れ様です!これからも頑張りますので、よろしくお願いします! (2019年7月20日 22時) (レス) id: d9ca70487a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:096 | 作成日時:2019年7月13日 14時