383話 ケーキが溶けた! ページ34
「Aさん、どうしたんですか?怖い顔で新聞なんて見つめて」
俺の斜め後ろから新聞を覗き込む零さんに視線を向けた。
そして、近くに梓さんがいないことを確認して、小声で尋ねる。
『東京サミットに、関わる予定ってある?』
そう聞くと、安室さんは零さんの顔になって小さな声で返した。
「警備に当たる予定だ。全世界からの要人が集まる場で、テロが起きる可能性もあるからな」
以前なら、そういう予定も教えてはくれなかったのに、と少し嬉しい反面、嫌な予感は肥大する。
『そう…』
何かが起きないわけがない。
だってここは、名探偵コナンの世界。
事件が日常の世界だ。
彼が死ぬことはないだろうが、大きな怪我は否めない。
「…何か――」
「ただいまー!」
零さんが言いかけたとき、元気な声が再び店内に響いた。
戻ってきた少年探偵団の歩美ちゃんの手には白い箱が。
「みんな見て!黒瀬お兄ちゃんも!!」
テーブル席へ召集され、俺は立ち上がりコナンの隣に座った。
右隣には梓さん。
箱の中身は、ケーキだった。
見た目はどこか、崩れる前の安室さんのケーキに似ている。
そのケーキを7等分に切り分けて、味を確かめることになったのだ。
ポアロのケーキの美味しさに嫉妬した商店街のケーキ屋さんが、夜中に忍び込み、ポアロのケーキを溶かして盗作したのではないかという歩美ちゃんの推理だ。
「卵を多く使ったケーキの生地って、だいたいこんな色だけどね」
「クリームも、同じような量を同じように塗れば、見た目は似るよね?」
なんでみんな、こんな真剣な表情でケーキを睨んでるの…。
盗作目的でポアロのケーキを溶かしたという推理、ありえなくはないが可能性は低いと思うんだけど…。
「じゃあ、盗作じゃないんですか?」
「だと思うけど…」
光彦の質問に返しながら、安室さんはフォークを手に取り、切り分けられたケーキを刺して、まずは香りを確認する。
「いただきます」
そして食べた。
それを見て、他のみんなもフォークを持ってケーキを食べたので、渋々俺も同じようにした。
「味はまったく別物ね」
「うん。ポアロのケーキの方がずっと美味しい」
そこは激しく同意だ。
見た目が似るケーキはたくさんあるし、盗作の可能性はやはりゼロだろう。
・
1187人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「名探偵コナン」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
096 - 柳さん» いえいえ!こちらこそありがとうございました!これからもよろしくお願いします! (2019年7月13日 14時) (レス) id: d9ca70487a (このIDを非表示/違反報告)
柳(プロフ) - 096さん» なるほど、説明ありがとうございました!これからも頑張ってください (2019年7月12日 6時) (レス) id: 6c07f7b951 (このIDを非表示/違反報告)
096 - 柳さん» 現生は、少し乱暴な現金の類語で、生の現金という意味です…!紛らわしい書き方をして申し訳ありません…!ご意見ありがとうございます! (2019年7月11日 22時) (レス) id: d9ca70487a (このIDを非表示/違反報告)
柳(プロフ) - 397話の「い、一回払い…しかも現生かい…」のところ、「現金」ではないでしょうか…?間違っていたら申し訳ございません (2019年7月10日 23時) (レス) id: 6c07f7b951 (このIDを非表示/違反報告)
096 - 花奏さん» コメントとお祝いのお言葉ありがとうございます!内容をお褒め頂き、とても嬉しいです…!!お気遣いもありがとうございます!これからも頑張りますので、よろしくお願いします! (2019年7月6日 21時) (レス) id: d9ca70487a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:096 | 作成日時:2019年6月16日 21時