374話 ページ25
「…私のせいなのかな…、糸井が死んだの…。…あいつ、私を守ろうとしてくれてたんだよね…」
『緒川さんのせいじゃありませんよ』
「…私もまだ好きだったの。でも、浮気されたのが許せなくて、ヨリを戻そうって言われても、素直になれなかった…」
『彼を忘れろなんて言わない。彼の分まで生きて、幸せになること。それが、残された人が出来る償いだよ』
「…できる、かな」
『しばらくは無理しないで。何かあったら頼ってくれていいから』
「…ありがとう」
これから受験という忙しい身だろう。
少しでも支えてあげなければ。
「家、ここであってますか?」
「うん。ありがとう、あむぴ」
「また何かあればポアロにどうぞ。待ってます」
俺も一度車から降りた。
「じゃあね、黒っち。私頑張るから。…ありがとう」
『うん。またね』
彼女が家に入るのを見届けて、ホッと息をつく。
左手で助手席の扉を開けて、車に乗り込んだ。
「いろいろあったようだな」
『まぁね。でも、事件も無事解決したし、ストーカーの件も片付いたから問題ないよ』
車を発進させた零さんに、詳しい報告をしながら家路に着く。
「なるほど。顧問がね」
『ただ、緒川さんが結構ダメージ受けてるから、精神的ケアもしないと…』
「随分彼女を気にかけているな。さっきもぴったりくっついてたし」
『ちょっと。変なところで嫉妬とかやめてよ?初めてのクライアントなんだから、気にするのは当然だろ』
「まぁ、お疲れ様。お前に任せてよかったよ。ほら、喉渇いてるだろ」
信号で車を止めた零さんが、そう言って缶ジュースを投げてきた。
『えっ、わ…っ…!?』
キャッチしようとしたが、手首に走った痛みで缶を取り落としてしまった。
『もう、急に投げるから――…』
足元に落ちた缶を拾い上げようと身を屈めようとすると、右手首をつかまれた。
『ッい…!』
「気づいてないとでも思ったか」
『あは…、やっぱりバレるんだ』
「車を開けるのも、シートベルトを止めるのも、ずっと左手だったからな」
右手の袖を捲ると、そこは紫色の痣になっていた。
『折れてはないと思うよ。逆上した犯人がパイプ椅子振り回して突っ込んできたから、とっさに』
「帰ったら大人しく手当てさせろよ。いいな?」
『はぁい』
信号が青になったため、車がゆっくり発進する。
また、心配かけさせたかな…。
もっと仕事を任せてもらえるように、頑張らないとな…。
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096 - 柳さん» いえいえ!こちらこそありがとうございました!これからもよろしくお願いします! (2019年7月13日 14時) (レス) id: d9ca70487a (このIDを非表示/違反報告)
柳(プロフ) - 096さん» なるほど、説明ありがとうございました!これからも頑張ってください (2019年7月12日 6時) (レス) id: 6c07f7b951 (このIDを非表示/違反報告)
096 - 柳さん» 現生は、少し乱暴な現金の類語で、生の現金という意味です…!紛らわしい書き方をして申し訳ありません…!ご意見ありがとうございます! (2019年7月11日 22時) (レス) id: d9ca70487a (このIDを非表示/違反報告)
柳(プロフ) - 397話の「い、一回払い…しかも現生かい…」のところ、「現金」ではないでしょうか…?間違っていたら申し訳ございません (2019年7月10日 23時) (レス) id: 6c07f7b951 (このIDを非表示/違反報告)
096 - 花奏さん» コメントとお祝いのお言葉ありがとうございます!内容をお褒め頂き、とても嬉しいです…!!お気遣いもありがとうございます!これからも頑張りますので、よろしくお願いします! (2019年7月6日 21時) (レス) id: d9ca70487a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:096 | 作成日時:2019年6月16日 21時