373話 ページ24
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「名推理だったわね、黒瀬くん」
笹川が連行されるのを見送っていると、佐藤刑事に声をかけられた。
『いえ。俺なんてまだまだですよ』
「一瞬貴方が、探偵ではなくて警察官に見えたの」
『え』
思わぬ言葉にドキッとした。
「不思議ね。全然似てないのに、彼が重なったわ」
『…彼?』
「…前、私が好きだった人。観覧車の爆弾解体中に亡くなったんだけどね」
そう言う佐藤刑事の横顔はとても儚げだった。
それに、観覧車の解体中って…もしかして…。
「ごめんなさいね、こんな話」
『あの、その人って…』
「貴方も、あまり無茶しちゃダメよ!まだ若いんだから、命は大切にして。…それじゃあ、今日は協力ありがとう」
綺麗な微笑を向けて、佐藤刑事は赤いスポーツカーに乗り込んだ。
零さんとは色違いの…マツダの赤のRX-7。
それを見送って、振り返った。
『…帰ろうか。送りますよ』
暗い表情の緒川さんに声をかける。
『蘭さんも、ありがとうございました』
「いえ、私はそんな…。気をつけて帰ってくださいね」
『はい。それじゃあまた』
蘭と別れると、緒川さんは俺の腕にぎゅっとしがみつく。
さて、どうしたものか…。
この状態だと家まで時間かかりそうだ…。
タクシーでも拾うか、と校門を出て考えていると、クラクションが鳴らされる。
そちらをみると、見慣れた白のスポーツカー。
『安室さん!』
安室さんはにっこり笑みを浮かべて窓を開けた。
…あれ、なんか心なしか、笑顔が怖いような…。
「お疲れ様です、Aさん。緒川さん、今日は行けずにすみませんでした。送るので乗ってください」
「あむぴ……」
車を降りてドアを開けてくれる安室さん。
緒川さんを後部座席に乗せ、俺は助手席に回ろうとしたのだが…。
「黒っち、隣にいて」
腕を引かれてどうしたものか、と思ったが、今は彼女の心のケアも大事だろう。
『わかりました』
俺は安室さんに一つ頷いて、狭い後部座席に乗り込んだ。
安室さんは少し不服そうだったが、察してくれたのか、そのまま車を発進させる。
『どうして俺のいる場所が?』
バックミラー越しに目が合ったが、すぐに逸らされる。
「僕も探偵ですよ。助手である貴方がどういう行動をするかぐらい、予測できます」
それでも今は何も聞かないということは、何かがあったことに気づいて、緒川さんに気を遣っているんだろう。
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096 - 柳さん» いえいえ!こちらこそありがとうございました!これからもよろしくお願いします! (2019年7月13日 14時) (レス) id: d9ca70487a (このIDを非表示/違反報告)
柳(プロフ) - 096さん» なるほど、説明ありがとうございました!これからも頑張ってください (2019年7月12日 6時) (レス) id: 6c07f7b951 (このIDを非表示/違反報告)
096 - 柳さん» 現生は、少し乱暴な現金の類語で、生の現金という意味です…!紛らわしい書き方をして申し訳ありません…!ご意見ありがとうございます! (2019年7月11日 22時) (レス) id: d9ca70487a (このIDを非表示/違反報告)
柳(プロフ) - 397話の「い、一回払い…しかも現生かい…」のところ、「現金」ではないでしょうか…?間違っていたら申し訳ございません (2019年7月10日 23時) (レス) id: 6c07f7b951 (このIDを非表示/違反報告)
096 - 花奏さん» コメントとお祝いのお言葉ありがとうございます!内容をお褒め頂き、とても嬉しいです…!!お気遣いもありがとうございます!これからも頑張りますので、よろしくお願いします! (2019年7月6日 21時) (レス) id: d9ca70487a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:096 | 作成日時:2019年6月16日 21時