778話 ページ29
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屋上にたどり着くと、飯田先生が一人フェンス越しに街を眺めていた。
陽は落ち、月がない空は闇に包まれている。
「…響輝……。それに、黒瀬先生も来たということは、やっぱり…」
俺の姿を見て、飯田先生は儚い笑みを浮かべた。
「…私は…多くの人を殺しました。罪を償います」
淡々と、飯田先生は俺を見て言った。
その言葉に嘘はなかった。
確かに彼女は、人を殺した。
『…そうですね。確かに貴方は何人も人を殺した。…そこにいる、天野菜緒に脅されて』
屋上の貯水槽の陰に隠れている彼女の存在を言い当てると、飯田先生は動揺を見せた。
響輝も俺の発言に驚いている。
『事の発端は、飯田先生が天野先生の犯行を目撃してしまったこと。現場を見られた天野先生は、飯田先生を脅した。“このことを誰かに言ったら、甥の響輝くんを殺す”とでも。それにとどまらず、飯田先生を共犯者にし、天野先生は金を巻き上げた男たちを事故に見せかけて殺すよう、飯田先生に命じていた』
「そ、れは……」
『だけど、天野先生は将来有望な響輝くんに目を付けた。彼を守るために、飯田先生は自分の手を汚し続けた。俺に響輝くんのカウンセリングをしてほしいと頼む貴女は、心から響輝くんのことを想っていました。もし…自分の罪が暴かれても、響輝くんが一人にならないように。この学校でまた頑張れるように』
「ぅっ…」
飯田先生は涙を流し、その場に崩れ落ちた。
『…天野先生。この姿を見ても、貴女は何も思いませんか?こうして飯田先生に自白をさせ、すべての罪を擦り付け、またのうのうと男を騙してその金銭を取り上げようとしていたんでしょうけど、もうすべて、分かってます』
彼女の気配がする方へ強い口調で言うと、ようやく貯水槽の陰からその姿を現した。
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096 - ロマンス細胞さん» いえいえ!こちらこそこめんとありがとうございました!告白もありがとうございます(笑) (2020年2月13日 13時) (レス) id: e8c1cec671 (このIDを非表示/違反報告)
ロマンス細胞(プロフ) - 096さん» 返信ありがとうございました!(´;ω;`)めっちゃ好きです←(突然) (2020年2月12日 22時) (レス) id: 3aaa867c85 (このIDを非表示/違反報告)
096 - ロマンス細胞さん» ありがとうございます!そう言っていただけて嬉しいです!これからも頑張ります! (2020年2月12日 21時) (レス) id: e8c1cec671 (このIDを非表示/違反報告)
ロマンス細胞(プロフ) - 最高です。これからも頑張ってください!!楽しみに読んでます。 (2020年2月12日 20時) (レス) id: 3aaa867c85 (このIDを非表示/違反報告)
096 - 赤の他人さん» ありがとうございます!これからも楽しんでいただけるように頑張りますね! (2020年2月10日 20時) (レス) id: e8c1cec671 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:096 | 作成日時:2020年1月20日 21時