恋とか花とか気持ちとか。 2 ページ7
ぶつかりこそしなかったが、風圧におそ松が目をパチクリさせる。
なんだあれ、と呆然とした面持ちで呟く。あんなに走って何があったんだ、と女性の先程の声の意味や嘔吐物が地べたもしくはゴミ箱に落ちる音がしなかった理由がいよいよ本気を出して気になり始めた。
(くっそ、俺いよいよ変態じゃねえか、チョロ松かよ)
好奇心が抑えきれず、内心チョロ松を変態呼ばわりしながら、おそ松はビルの隙間に入った。自分の頭を掻きながらビルの隙間に入ると、明るいビル街から一転、まるで別世界に入ったような感覚に陥る。
ビルの隙間の空間は存外綺麗だった。青いプラスチック製の大きい二つのゴミ箱はキチンと端に寄せられ、ゴミなどは散乱していない。そんな意外にも小綺麗な空間だったが、やはり二つの障害物に阻まれ光が入ってこないそこはどこか怖いような薄暗い雰囲気があった。
そのまま勢いでもう一歩踏み出すと、ここを寝床にしているらしい猫がゴミ箱の裏から這い出てくる。どっか行け、と言うようにふてぶてしくにゃー、と鳴いた。動かずにいると、ここから出て行かないとわかったらしい猫が戻るまでに出ていけよ、と言うようにまた一鳴きして、どこかへ歩き去っていく。
どうやら許されたらしい、とわかったおそ松が歩き去っていく白猫を見送る。一松の猫かな、と一瞬思ったおそ松だがすぐに一松の猫は赤い目じゃなかったことに思い当たって、その考えを捨てると、すぐに女性が吐いたであろう嘔吐物を探した。
しかし、それらしきものは見当たらない。
(ゴミ箱の中か？)
一つだけ蓋が開いているゴミ箱の中を覗き込む。と、そこにはゴミの上に一輪の花が存在しているだけだった。花弁が花の周りに散乱し、点在している。
母の日に何度もあげたカーネーションがそこにはあった。だが、その色は白く、ゴミの上ではその白が些か場違いに思える。
手に取り、眺めてみる。
しかし、それは何の変哲もない生花だった。
(さっきの子が捨てたのか？ けど、包装されてねえしな)
剥き出しになった茎の部分を持っている自分の手をぼんやりと眺める。
そして、じゃあ何でだ、と新たに思考を巡らせる。
嘔吐物が叩きつけられる音がしないこと。先程の女性が漏らしていた困惑したような声。無い嘔吐物。その代わりというように、ここに存在している、花。すべての疑問を辻褄が合うように繋げてみる。
(……まさか、花を、吐いたのか？)
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チョロ松girl⊂⌒⊃ - とても、綺麗な話でした！ そして、色々と考えさせて貰いました。 (2019年7月15日 22時) (
レス) id: d9fccfe3cd (このIDを非表示/違反報告)
Aster - 野口さん» 少しでも貴方の考えの参考になったのなら嬉しいです。続編でもよろしくお願いします。 (2016年12月11日 18時) (レス) id: 7de9db5b63 (このIDを非表示/違反報告)
Aster - 紫流さん» 私は常々人の心を動かすのが物書きの仕事だと思っています。夢に一歩近づけたかな、と嬉しくなりました。こちらこそ素敵なお言葉をありがとうございます。 (2016年12月11日 18時) (レス) id: 7de9db5b63 (このIDを非表示/違反報告)
野口 - 今回のもとても綺麗でおもしろかったです！ (2016年12月7日 8時) (レス) id: 1de2cb0f26 (このIDを非表示/違反報告)
野口 - 新しいの読ませていただきました 今回のは読んでいて、あまり輪廻の話に興味がなかったんですが、来世でもその人を好きでいられるかというのは難しいと思いました。だって逢える確率の方がひくいもん、だから今精一杯の愛を！ってことかなぁと考えさせていただきました (2016年12月7日 8時) (レス) id: 1de2cb0f26 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Aster | 作成日時：2016年8月30日 8時
