恋とか花とか気持ちとか。 31 ページ36
「気持ちに気づいたのは、二年前だ。好きになったのはずっと前からだろうな。花吐き病にかかったのは、二ヶ月程前だ。多分、お前とそう変わらないだろう？」
「ああ……」
聞いてみるが、頭に意味を伴って言葉が入ってこない。おそ松の頭は始終パニック状態だった。嬉しいはずなのに、困惑が先に立って、嬉しさがこみ上げてこない。
すると、カラ松がおそ松の前に立ち、座ったままのおそ松の顎を掴み、自分の方に向けて言った。
「オレはな、ずっと待ってたんだ。気持ちに気づいたときからずっとな。
お前を見る限り、お前もオレを好いてくれているはずなのに、お前は全然オレの気持ちにも、自分の気持ちにも気づいてくれない。そりゃお前が好いてくれてるというのは自分の勘違いなのか、と何度も思ったさ。
でも、そう簡単に諦めれるわけないだろ？ 相手は自分のことを好きじゃなさそうです諦めましょう、はいそうですか諦めます、とはならないだろ？ ずっと好きだったんだ。簡単には諦めきれない。
なあおそ松。オレはこれを好機だと思ってる。
……諦めて、ここまで堕ちてこい、おそ松」
酷く獰猛な暗い目で口を歪めるようにして、おそ松に笑いかけるカラ松。
とても恐ろしいことを言われていると、酷く獰猛な飢えた獣に、病んでしまった人間に捕まってしまったとわかっているはずなのに。なぜだろう、おそ松はそれを嬉しいと感じてしまった。自分の口元が緩んでくるのがわかる。
「いいよー、カラ松ぅ。俺がとことん一緒に堕ちてあげる。気づくのは遅くてもずっと好きだったみたいだしね。
ただ、俺以外に目を向けたりなんかしたら、……許さないよ？」
多分、今、自分はカラ松と同じ顔をしているのだろう。おそ松の言葉にカラ松は満足そうに笑う。
二人は抱き合い、お互いに白銀の百合を吐き出した。おそ松の脳裏に、あの日見た白いカーネーションが思い起こされる。
(多分、あの子も花吐き病だったんだな、あの子も相手と幸せになってるといいな)
おそ松がいつか見た女性を思い出し、幸せを願っていると、カラ松が体を少し離して、話しかけた。
「な、おそ松。花言葉の通りになっただろう？」
その手に持たれていたのは、自分が吐いた焼けなかった花。
黄色い花弁を身につけた、レンギョウという名の、「叶えられた希望」という花言葉を持った花。
「そうだな」
二人はやっと掴んだ幸せを噛み締め、また抱きあった。白銀の百合に囲まれながら。
Fin.
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チョロ松girl⊂⌒⊃ - とても、綺麗な話でした！ そして、色々と考えさせて貰いました。 (2019年7月15日 22時) (
レス) id: d9fccfe3cd (このIDを非表示/違反報告)
Aster - 野口さん» 少しでも貴方の考えの参考になったのなら嬉しいです。続編でもよろしくお願いします。 (2016年12月11日 18時) (レス) id: 7de9db5b63 (このIDを非表示/違反報告)
Aster - 紫流さん» 私は常々人の心を動かすのが物書きの仕事だと思っています。夢に一歩近づけたかな、と嬉しくなりました。こちらこそ素敵なお言葉をありがとうございます。 (2016年12月11日 18時) (レス) id: 7de9db5b63 (このIDを非表示/違反報告)
野口 - 今回のもとても綺麗でおもしろかったです！ (2016年12月7日 8時) (レス) id: 1de2cb0f26 (このIDを非表示/違反報告)
野口 - 新しいの読ませていただきました 今回のは読んでいて、あまり輪廻の話に興味がなかったんですが、来世でもその人を好きでいられるかというのは難しいと思いました。だって逢える確率の方がひくいもん、だから今精一杯の愛を！ってことかなぁと考えさせていただきました (2016年12月7日 8時) (レス) id: 1de2cb0f26 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Aster | 作成日時：2016年8月30日 8時
