恋とか花とか気持ちとか。 30 ページ35
「何で、お前が花吐き病を……？」
問いかけてみると、カラ松はうっすらと笑みを浮かべて答える。
「お前も知っているだろう、花吐き病、正式名称嘔吐中枢花被性疾患が、片思いを拗らせて発症することは。つまり、オレも恋をしているんだよ」
カラ松が、恋。
その事実が突きつけられて、おそ松の胸が痛む。それと同時に喉に異物が生じた。
そのことに絶望する。
(何で、今、カラ松も目の前にいるのにっ……)
吐いちゃいけない、と思うのに、努力するのに、それでも咳は止めることができなかった。
「げえ゛っ、ごほ、がはっ」
「……発作か」
「いや、かはっだ、ごほっごぼっ、見、んな……」
見られたくなかったのに。カラ松にだけは自分が口から花を吐くなんて姿見せたくなかったのに。見ないで。見ないで。引かないで。……嫌いにならないで。
そう思うのに、体が花を吐こうとして言うことを聞いてくれない。足の力が抜ける。カラ松が、自分が花を吐くのを見ていると思うと、おそ松は目の前が暗くなった。
思い通りにならない自分の体に苛つきながら、花を吐き出す。
出てきたのは、おそ松も知ってる、雨の日に見たことがある紫色のヒヤシンス。
花を吐いて一気に体力が無くなったおそ松は、肩で息をする。カラ松はそんなおそ松に近づくと、今し方吐いたヒヤシンスを手に取った。
「紫色のヒヤシンス……、「私は悲しい」か。オレのことを思って吐いたのか？ 発作は、想い人に強い感情を抱いたときにしか吐かないもんな」
肯定も否定も、おそ松はしなかった。
それでも、カラ松は自分の答えを見透かしているようで。カラ松はヒヤシンスから目を離し、おそ松を見据えて言った。
「……おそ松、お前が勘違いしてるようだから言うが、オレが好きなのはお前だ。言わなくても、今までの行動でわかると思ってたんだが、そんなことはなかったみたいだな」
「え？」
一気に言われて、おそ松は理解できない。
(今、何て言った？ カラ松が俺を、好き？)
下げていた顔を上げ、カラ松の顔を見る。その顔は、真剣そのもので到底嘘をいているようには見えない。というか、カラ松は嘘をつくのが下手なので、すぐおそ松はついたらわかる。つまり。
(本当に、俺のことが？)
一気に顔が熱くなった。人間って熱出したとき以外にもこんな顔熱くなるものなんだな、と言うほど。
「っ！」
「どうやら理解したみたいだな。まあ理解してもらわないと困るんだが」
「えっと、いつから……？」
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チョロ松girl⊂⌒⊃ - とても、綺麗な話でした！ そして、色々と考えさせて貰いました。 (2019年7月15日 22時) (
レス) id: d9fccfe3cd (このIDを非表示/違反報告)
Aster - 野口さん» 少しでも貴方の考えの参考になったのなら嬉しいです。続編でもよろしくお願いします。 (2016年12月11日 18時) (レス) id: 7de9db5b63 (このIDを非表示/違反報告)
Aster - 紫流さん» 私は常々人の心を動かすのが物書きの仕事だと思っています。夢に一歩近づけたかな、と嬉しくなりました。こちらこそ素敵なお言葉をありがとうございます。 (2016年12月11日 18時) (レス) id: 7de9db5b63 (このIDを非表示/違反報告)
野口 - 今回のもとても綺麗でおもしろかったです！ (2016年12月7日 8時) (レス) id: 1de2cb0f26 (このIDを非表示/違反報告)
野口 - 新しいの読ませていただきました 今回のは読んでいて、あまり輪廻の話に興味がなかったんですが、来世でもその人を好きでいられるかというのは難しいと思いました。だって逢える確率の方がひくいもん、だから今精一杯の愛を！ってことかなぁと考えさせていただきました (2016年12月7日 8時) (レス) id: 1de2cb0f26 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Aster | 作成日時：2016年8月30日 8時
