恋とか花とか気持ちとか。 14 ページ19
まさか、それも相棒に、また呼ばれる日が来るとは。
懐かしい呼び名に、おそ松は泣きそうだった。
出そうになった涙を振り払い、満面の笑みで答える。
「ああ、ありがとなチョロ松、我が相棒」
おそ松も勇気を出して、「相棒」と呼んでみる。言外に、「お前は今でも俺のたった一人の相棒だよな？」という懸念を含ませながら。
その意味はしっかりとチョロ松に伝わったらしく、一つため息をつくと、相棒時代のいたずらっぽい笑みで答えてくれた。
「当たり前だろ、相棒」
おそ松とチョロ松が、相棒に戻った一時だった。
おそ松は水を止めると、お蔵入りになっていた花瓶に二輪の薔薇を挿す。
暗闇に紅い薔薇が浮かび上がっている。自分の、色。
洗面台の棚にあるうがい用のコップは三つに分かれている。おそ松とカラ松の歯ブラシが入ったコップ、潔癖症のチョロ松のために個別に作られたチョロ松の歯ブラシが入ったコップ、一松と十四松とトド松の歯ブラシが入ったコップ。
おそ松の歯ブラシは、赤。これが自分の色。定められた色。
重なっていた自分の歯ブラシとカラ松の歯ブラシを離す。カチャ、と音がした。
「……頑張らなきゃな」
決意を込めた言葉を誰にともなく放つ。
＿＿翌日、松野家の玄関には花瓶に挿さった二輪の薔薇があった。
.
居間でおそ松はテレビを見ていた。画面の中では、芸人二人が漫才を繰り広げている。
あの日以来、おそ松のカラ松への接し方は少し変わった。あまり肉体的な接触を取らなくなったのだ。今までだったらすぐに抱きついていたのをしなくなった。
でも、それだけで、他は極めていつも通りで変わっていない。ただ、肩を抱かなくなっただけ。ただ、カラ松に対して性的なふざけをしなくなっただけ。
そんな些細な変化。元々、人の変化に疎いカラ松が気づくはずがなく。
チョロ松は何か言いたげだったが、確かに周りに迷惑はかけていないし、何より当の本人が気づいていないため、結局口を噤んでいてくれた。そのことにとてもおそ松は感謝している。
しばらく花吐き病と付き合って、おそ松にはわかったことがあった。
一つ目は、花吐き病の症状はカラ松に対して強い感情を持ったときに出るのだということ。それは、愛しさでも、反対に憎々しさでもいい。
そして、二つ目は、＿＿吐いた花の花言葉はすべて自分の気持ちが具現化されたものだということ。
おそ松に二度目の症状が出たとき、こんなことがあった。
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チョロ松girl⊂⌒⊃ - とても、綺麗な話でした！ そして、色々と考えさせて貰いました。 (2019年7月15日 22時) (
レス) id: d9fccfe3cd (このIDを非表示/違反報告)
Aster - 野口さん» 少しでも貴方の考えの参考になったのなら嬉しいです。続編でもよろしくお願いします。 (2016年12月11日 18時) (レス) id: 7de9db5b63 (このIDを非表示/違反報告)
Aster - 紫流さん» 私は常々人の心を動かすのが物書きの仕事だと思っています。夢に一歩近づけたかな、と嬉しくなりました。こちらこそ素敵なお言葉をありがとうございます。 (2016年12月11日 18時) (レス) id: 7de9db5b63 (このIDを非表示/違反報告)
野口 - 今回のもとても綺麗でおもしろかったです！ (2016年12月7日 8時) (レス) id: 1de2cb0f26 (このIDを非表示/違反報告)
野口 - 新しいの読ませていただきました 今回のは読んでいて、あまり輪廻の話に興味がなかったんですが、来世でもその人を好きでいられるかというのは難しいと思いました。だって逢える確率の方がひくいもん、だから今精一杯の愛を！ってことかなぁと考えさせていただきました (2016年12月7日 8時) (レス) id: 1de2cb0f26 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Aster | 作成日時：2016年8月30日 8時
