six cafe ページ7
.
男の子は、彼女の笑みを見て、釣られてにこりと笑う。
「その飴、あげるよ。だから泣かないで、ね?」
「うん!」
男の子は元気を取り戻して、そう楽しそうに返事をする。
焦っていた母親もホッとしたように笑い、店内にあった張り詰めた空気が緩んだ。
「ありがとう! まほうつかいのおねえちゃん」
「いいえ〜」
「本当にありがとうございます」
「いえ、お気になさらないでください」
店を出るまで礼を言い続けた母親に、いえいえ、と手を振りつつ彼女は笑う。
そして、達成感で満ち足りた表情でこちらを振り返った彼女は、しまった、という顔をした。
そのまま、急いでレジに戻って、いらっしゃいませ、と言う。
俺はその一連の流れに少し笑みをこぼして、レジの前に立った。
「遅くなってしまってすみません!」
「いえ、大丈夫です。気にしないでください」
申し訳なさそうに謝る彼女にそう言って、いつものように注文する。
まだ治りきっていない喉からは、掠れた声しか出なかった。
彼女はすぐさまドリンク作りに取り掛かる。
彼女に出会ってから、もう二ヶ月が過ぎようとしているのか…。
少ししみじみとしながら、彼女の仕事ぶりを見つめる。
「お待たせしました」
そう言って彼女から渡されたカフェオレの横に、小さな黄色の包みが置かれていた。
「…これ、?」
「飴です! 声がいつもと変だったので、風邪かなぁと思いまして…」
彼女からの優しさに俺が反応できないでいると、
「あ、お節介…ですよね、すみません!」
と、少し恥ずかしそうに苦笑する。
「…いえ、とても嬉しいです。ありがとうございます」
心いっぱいに広がった幸せと喜びを噛みしめるように、そうゆっくりと呟く。
彼女はそんな俺の姿に、拍子抜けした顔をして、良かったですと安心したように笑った。
「風邪で喉がやられちゃったんで、助かりました」
「本当に風邪だったんですか!」
俺があはは、と苦笑すると、彼女はそう言って驚いた。
すると、彼女は
「私の傘を使われずに、雨の中走っていってしまわれたからですよ。きっと」
と、いたずらっ子のように笑う。
「風邪、ひかれないっておっしゃってませんでしたっけ?」
「滅多に! って言ったんです。今回はたまたまですよ」
彼女は俺の言葉に、信じていなさそうに笑って、お大事にと言う。
沢山の表情を見れた喜びを噛み締め、俺はいつもの席へと腰を下ろした。
535人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
mifulu(プロフ) - ほわさん» ご指摘ありがとうございます! バーコードって変ですね笑 これからもよろしくお願いします。 (2019年9月10日 9時) (レス) id: 8875a6e61c (このIDを非表示/違反報告)
ほわ(プロフ) - 誤字とかじゃないんですけど、最新話のバーコードはQRコードにした方が良いと思いますよ!続き楽しみにしてます!更新頑張ってください! (2019年9月10日 0時) (レス) id: d0efce02c1 (このIDを非表示/違反報告)
mifulu(プロフ) - 白うさぎさん» ありがとうございます! ゆっくりになるとは思いますが、楽しんでもらえるよう頑張ります。 (2019年7月21日 23時) (レス) id: 477f578196 (このIDを非表示/違反報告)
白うさぎ - とても面白くて、毎日楽しみにしています!更新頑張って下さい(*^^) (2019年7月21日 17時) (レス) id: 33733f1464 (このIDを非表示/違反報告)
mifulu(プロフ) - 華恋さん» 初めまして(*^^*) ありがとうございます! テストが近いのでゆっくりになるとは思いますが、期待に応えられるように頑張ります! (2019年6月30日 10時) (レス) id: 80a048a51f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:mifulu | 作成日時:2019年6月10日 0時