trente cafe ページ31
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高揚感に満ちた、帰り道。
電車の中で、まだあまり手に馴染んでいないスマホとにらめっこする。
その画面の中には、家族と仲がいい友達数人と、吉沢亮の文字が映し出されていた。
まさか、有名人の方とLINEを交換するなんて。
しかも、それが吉沢り、…吉沢さんだなんて。
私は画面を見ながら、緊張を吐き出すように息を絞り出した。
信じられない。
っていうか、そもそも私なんかと交換しちゃっていいの!?
いや、バレないだろうけど、バレたらダメだよね…。
そこまで考えて、私はハッとあることに気づく。
どうしたらいいんだろ、と悩みながら画面をいじっていれば、名前の横に鉛筆のマークが付いているのに気づいた。
そこをタップして、あらかじめ入っていた文字を消す。
えっと、何がいいんだろ…。
向こうに見られないとはいえ馴れ馴れしいのは嫌だし、そのままはばれちゃうかも。
よしざわさん? いや、吉沢さんだったらバレないかな…。
私は考えに考え、たったっと文字を打つ。
そこには、[吉澤さん]と打ち込まれた。
よし、これじゃあバレないでしょう!
私は満足して一人で微笑んで、電車の窓から外を見た。
通り過ぎていく夜景に、私は妙に気を取られた。
いつもと変わらないその景色が、なぜかキラキラして、どこか寂しく見える。
初めて見た舞台に感動して。
久々に会った吉沢さんとの時間が楽しくて。
でも、そういう嬉しい時間を過ごす程、私の心の中は重いもので満たされていく。
それは不透明で不確かな、光の見えない世界のような。
そんな、漠然とした不安が私を埋めていくのだ。
そんなことを考えて電車を降りる。
もう人気のなくなった駅のホームから出て家路へと着いた。
進むべきじゃないと思っていても、会ってしまうとそんなことはすっかり忘れてしまって。
こうして、後からグルグルと考え込む。
昔からの悪い癖だ。
そうしてため息を一つつく。
足元の地面ばかりを見て歩いていた私は、伸びも兼ねて思いっきり空を見上げた。
晴れた夜空には、キラキラと星が輝いている。
新月のせいか、今日はいつもよりも数が多く見えた。
大丈夫、大丈夫。
あれなら、きちんと境界線を引いて。
自分のために、相手のために、踏み込みすぎないようにしよう。
私はそう決めたのだった。
しかし、そういう独りよがりな考え方は、そう長くは続かないのだ。
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mifulu(プロフ) - ほわさん» ご指摘ありがとうございます! バーコードって変ですね笑 これからもよろしくお願いします。 (2019年9月10日 9時) (レス) id: 8875a6e61c (このIDを非表示/違反報告)
ほわ(プロフ) - 誤字とかじゃないんですけど、最新話のバーコードはQRコードにした方が良いと思いますよ!続き楽しみにしてます!更新頑張ってください! (2019年9月10日 0時) (レス) id: d0efce02c1 (このIDを非表示/違反報告)
mifulu(プロフ) - 白うさぎさん» ありがとうございます! ゆっくりになるとは思いますが、楽しんでもらえるよう頑張ります。 (2019年7月21日 23時) (レス) id: 477f578196 (このIDを非表示/違反報告)
白うさぎ - とても面白くて、毎日楽しみにしています!更新頑張って下さい(*^^) (2019年7月21日 17時) (レス) id: 33733f1464 (このIDを非表示/違反報告)
mifulu(プロフ) - 華恋さん» 初めまして(*^^*) ありがとうございます! テストが近いのでゆっくりになるとは思いますが、期待に応えられるように頑張ります! (2019年6月30日 10時) (レス) id: 80a048a51f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:mifulu | 作成日時:2019年6月10日 0時