vingt-neuf cafe ページ30
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彼女の意外な返事に、俺は思わず聞き返さずにはいられなかった。
「…え、今なんて」
「良いですよ。連絡先交換するの」
さっきよりも少し照れ臭そうに笑いながら、彼女はそう快く答えてくれた。
俺の心は、緊張や不安でいっぱいだったからか、一気に安心感でいっぱいになる。
彼女が鞄からスマホを取り出すのを見つめながら、俺はその姿を目に焼き付けた。
彼女は取り出し終わると、俺の視線に不思議そうに笑った。
「…えっと、何か付いてますか?」
「あ、いや、ごめんなさい。すぐ! スマホ! 出します!」
「いや、全然。ゆっくりで大丈夫です」
あたふたと焦った俺に、彼女はまた笑みをこぼした。
テンションが上がっているのか、何度も零される多くの種類の笑みに、いちいちドキドキしてしまう。
そんな動揺を知られまいと、頑張って隠そうとすればする程無愛想になってしまって。
俺はどうしたらいいか迷いつつ、スマホを取り出した。
「LINE、やってますか?」
「はい」
「じゃあ、QRコード見せてもらっても?」
「…QR、コード、?」
俺の言葉に、少し困ったように眉を下げ、小さな声でそう繰り返す。
「あの…QRコードってどうしたら出てきますか?」
「あ、もしかして初めてですか」
「はい…。お恥ずかしながら、最近スマホに機種変しまして…」
と、彼女は今日イチ恥ずかしそうに、そして申し訳なさげにそう続けた。
そんな姿にまた俺はやられつつ、そうですか、と零す。
「あ、じゃあ、ふるふるにしましょう」
「ふるふる!!」
彼女がそう言ってキラキラと目を輝かせるものだから、俺は思わず吹き出してしまった。
「笑わないでくださいよ! 一度してみたかったんです!」
ムッとして言う彼女に、笑いながら謝ってふるふるの仕方を教える。
そして、二人してスマホをふるふる振りあえば、お互いのスマホに映し出される。
「出来ました! 吉沢亮さん!」
喜びが移ってきそうな満面の笑みにつられて、俺も笑う。
「ありがとうございます、吉沢亮さんのおかげで一つ賢くなりました!」
「いえいえ、どういたしまして」
そう笑い合いながら、俺はひとつ気になったことを聞いてみる。
「そういえば、なんで吉沢亮ってフルネームなんですか?」
その俺の言葉に、少しだけ彼女の表情が硬くなった気がした。
「いえ、別になんとなくです」
「…片方だけでいいですよ?」
「…ありがとうございます、吉沢さん」
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mifulu(プロフ) - ほわさん» ご指摘ありがとうございます! バーコードって変ですね笑 これからもよろしくお願いします。 (2019年9月10日 9時) (レス) id: 8875a6e61c (このIDを非表示/違反報告)
ほわ(プロフ) - 誤字とかじゃないんですけど、最新話のバーコードはQRコードにした方が良いと思いますよ!続き楽しみにしてます!更新頑張ってください! (2019年9月10日 0時) (レス) id: d0efce02c1 (このIDを非表示/違反報告)
mifulu(プロフ) - 白うさぎさん» ありがとうございます! ゆっくりになるとは思いますが、楽しんでもらえるよう頑張ります。 (2019年7月21日 23時) (レス) id: 477f578196 (このIDを非表示/違反報告)
白うさぎ - とても面白くて、毎日楽しみにしています!更新頑張って下さい(*^^) (2019年7月21日 17時) (レス) id: 33733f1464 (このIDを非表示/違反報告)
mifulu(プロフ) - 華恋さん» 初めまして(*^^*) ありがとうございます! テストが近いのでゆっくりになるとは思いますが、期待に応えられるように頑張ります! (2019年6月30日 10時) (レス) id: 80a048a51f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:mifulu | 作成日時:2019年6月10日 0時