vingt-quatre cafe ページ25
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「っ、はい、そうです」
私の質問に、彼はどこか嬉しそうに、でも少し恥ずかしそうにそう答えた。
私は、そのなんとも言えない表情に、思わず息をするのも忘れて見入ってしまう。
けれど、お客さんの前だと気持ちを落ち着かせ、なんとか冷静を保った。
「あのカフェに行ってはカフェオレを頼んでたやつです」
「ふふふ、カフェオレがお好きなんですね」
私の笑いに彼もつられて笑って、少しの間笑い合う。
そして、
「あの…」
と、彼はそこまで言うと、眉をひそめて何かを考え込んだ。
私は不思議に思って彼を見続ける。
すると、何か複雑そうな表情に一瞬なった後、もう一度あの、と言い直した。
「はい?」
「実は、これをずっと渡したくて」
そう言って彼はカバンの中から茶色い封筒を一通取り出した。
私は、渡されるままそれを受け取る。
「中を拝見しても大丈夫ですか?」
「はい、むしろみて下さい」
そう促され、封筒を開けてずるずると中身を引き出した。
そこに入ってあったのは、折りたたまれて少し分厚くなった紙と、二枚の細長い紙切れ。
その両方に書かれていたのは、『ライ王のテラス』という文字だった。
「っ、もしかしてこれって、舞台のチケット…ですか?」
「はい。脇役なんですが、俺が出るやつです」
彼は少しだけ照れ臭そうにそう言った。
私は、目の前の彼の顔と手元のチケットを交互に見た。
彼は少し嬉しそうに私の顔を覗き込む。
「良かったら見に来てもらえませんか? それ引き換え券になってるので、いつでも好きな席で観れます」
「い、良いんですか? 私が頂いてしまって」
私は遠慮がちにそう訊くが、
「はい。あなたに来て欲しいんです」
と、彼は何やら真っ直ぐな瞳でそう言い切った。
私はその言葉にもう何も言えなくなって、
「ありがとうございます。是非、見に行かせていただきます」
と、少し早い口調でそういった。
でも、彼の力強い瞳からは目が離せなかった。
彼は私の言葉に、安堵した表情を見せると、嬉しそうに笑った。
「じゃあ、仕事があるので僕はこれで。押し付ける風になってしまってすみません」
「いえ…」
「見に来てもらえるの、楽しみに待ってます」
彼は爽やかな笑みと共にその言葉を残し去っていった。
私は、目の前で起こったことに驚きを隠せず、ただ呆然と彼の出ていった扉を見つめた。
少しだけ、自分が纏う空気が熱いような気がした。
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mifulu(プロフ) - ほわさん» ご指摘ありがとうございます! バーコードって変ですね笑 これからもよろしくお願いします。 (2019年9月10日 9時) (レス) id: 8875a6e61c (このIDを非表示/違反報告)
ほわ(プロフ) - 誤字とかじゃないんですけど、最新話のバーコードはQRコードにした方が良いと思いますよ!続き楽しみにしてます!更新頑張ってください! (2019年9月10日 0時) (レス) id: d0efce02c1 (このIDを非表示/違反報告)
mifulu(プロフ) - 白うさぎさん» ありがとうございます! ゆっくりになるとは思いますが、楽しんでもらえるよう頑張ります。 (2019年7月21日 23時) (レス) id: 477f578196 (このIDを非表示/違反報告)
白うさぎ - とても面白くて、毎日楽しみにしています!更新頑張って下さい(*^^) (2019年7月21日 17時) (レス) id: 33733f1464 (このIDを非表示/違反報告)
mifulu(プロフ) - 華恋さん» 初めまして(*^^*) ありがとうございます! テストが近いのでゆっくりになるとは思いますが、期待に応えられるように頑張ります! (2019年6月30日 10時) (レス) id: 80a048a51f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:mifulu | 作成日時:2019年6月10日 0時