vingt-trois cafe ページ24
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目の前にいる彼から放たれたドラマのような台詞に、私は思考が完全に停止してしまっていた。
ただでさえ、目の前にいることですら理解が追いつかないのに、さらにそんなことまで言われては、もう頭はショート寸前。
何も声を発さず、目を見開いて佇む私を不思議に思ったのか、彼は慌てた様子で再び喋り出した。
「あ、いや、急にこんなこと言われても迷惑ですよね、すみません」
そう言うと、彼は次に紡ぐ言葉を探すように、彼は口を閉じた。
そうすれば、私たちを沈黙が包む。
このまま彼の言葉を待つべきなのかどうなのか迷って、私は恐る恐る口を開いた。
「いえ、あの、迷惑なんかじゃないです! ただ、急なことでびっくりしてしまって…」
私がそう言うと、彼はホッとした表情を浮かべて、
「そう、ですよね」
と、苦笑いを一つこぼした。
そして、再びこの部屋に沈黙が訪れる。
私は、きっと彼の言葉をゆっくり待つ方がいいのだろうと判断して、彼をまっすぐ見た。
空調の風で、椅子の横にある観葉植物の葉が揺れる。
意を決したように顔を上げた彼の焦げ茶色の瞳も、ゆらゆらと揺れていた。
「…竹内さん、で合ってますか?」
「はい、竹内です」
「こんなこと聞いたら気持ち悪いかもしれないんですけど、最近までカフェで働いてませんでしたか?」
なぜ、こんな人が私のことを知っているのかに驚きつつ、私はゆっくり、はいと一つ頷いた。
すると、彼はまた少しホッとしたように笑って、私の目を見る。
そのしっとりとした優しい目に、どこか既視感を感じながら、私も何とか見つめ返す。
「実は、俺もそこに通ってたんです」
「…え、?」
いくつも落とされる真実の爆弾に、私はまたもや驚きを隠せなくなる。
通ってたって、お客さんとしてってことだよね?
お客さん、お客さん…。
っ、もしかして、まさか…!
私は驚きのあまり、思わず目を見開いた。
もしそうだとしたら、くぐもった声が似ているのも、彼の目を見たときの既視感も説明がつく。
私が心の中で出会った答えに、驚き慄いていれば、彼は心配そうに私を覗き込んだ。
「あの…大丈夫、ですか?」
「は、はい、大丈夫です」
私は言葉につっかえながら、そう返事をする。
彼の言葉を聞こうと目を見るが、その度に私の中の答えがチラついて離れない。
私は失礼だと思いつつ、彼が口を開く前に言葉を発した。
「もしかして、よくカフェオレを飲んでらしたお客様ですか?」
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mifulu(プロフ) - ほわさん» ご指摘ありがとうございます! バーコードって変ですね笑 これからもよろしくお願いします。 (2019年9月10日 9時) (レス) id: 8875a6e61c (このIDを非表示/違反報告)
ほわ(プロフ) - 誤字とかじゃないんですけど、最新話のバーコードはQRコードにした方が良いと思いますよ!続き楽しみにしてます!更新頑張ってください! (2019年9月10日 0時) (レス) id: d0efce02c1 (このIDを非表示/違反報告)
mifulu(プロフ) - 白うさぎさん» ありがとうございます! ゆっくりになるとは思いますが、楽しんでもらえるよう頑張ります。 (2019年7月21日 23時) (レス) id: 477f578196 (このIDを非表示/違反報告)
白うさぎ - とても面白くて、毎日楽しみにしています!更新頑張って下さい(*^^) (2019年7月21日 17時) (レス) id: 33733f1464 (このIDを非表示/違反報告)
mifulu(プロフ) - 華恋さん» 初めまして(*^^*) ありがとうございます! テストが近いのでゆっくりになるとは思いますが、期待に応えられるように頑張ります! (2019年6月30日 10時) (レス) id: 80a048a51f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:mifulu | 作成日時:2019年6月10日 0時