treize cafe ページ14
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彼女を好きになって、もうすぐ二年が経とうとしていた頃。
俺は仕事終わりに、居酒屋の個室で友達と酒を飲んでいた。
「で? 亮はあの子とどうなの?」
友達、もとい千葉雄大は酒を飲みつつ、机に顎を置いてそう聞いてきた。
俺はお猪口の中でわずかに波打つ酒を見つめて、ぼそりと返す。
「どうなのって…別に何も…」
「まだ進展なしな訳?」
「最近仕事が忙しくて全然行けなかったし、いっても会えなかったりだったから」
俺がそういえば、雄大は眉をひそめて俺を見る。
「それは言い訳だよ」
「…この前、あの子の名前知ったよ?」
痛いところを刺されて、そう逃げるように言えば、
「どうせ苗字でしょ」
と、バッサリと俺の言い分を切り捨てる。
図星で黙り込んだ俺に、雄大は俺の目も見ず言い放った。
「それに亮のことだから、それも店員さん同士のやりとりで知ったとかでしょ」
「なっ…」
二度目も当てられて、俺は思わず声を漏らす。
雄大はその声を聞くと、
「図星なんじゃん」
と、鼻で笑うようにして、手元にある酒を飲み干す。
店員さんを呼んで酒を注文すると、険しい顔つきで俺の方へと向き直った。
「本当に、今まで何してきたのさ。あの子と出会って二年も経つっていうのに!」
俺はもう言葉も出なくて、ゆらゆらと揺れる酒の表面を見つめた。
そんな俺に、雄大は引くこともなく畳み掛ける。
「人見知りなのは十分知ってるし、女の人にある程度の恐怖心があるのも勿論。けど…」
「分かってるよ」
俺はお猪口を机の上に置いて、雄大の言葉を遮るように言った。
すると、扉が開いて店員さんが入ってきて、ビールを置く。
店員さんは、俺たちの微妙な空気から逃げるように、そのままそそくさと出て行った。
「…自分が動かなきゃ、いけないことくらい、分かってる。でも…」
その度俺の脳裏をちらつくのは、彼女に誰か相手がいるかもしれない、という事実。
もしかしたら片想い中かもしれないし、はたまた、もう叶うことのない恋をしているかもしれない。
そんな俺に雄大は一つため息をついた。
「そんなこと、一目惚れした時点でわかってることでしょ」
今更ウジウジ考えたって、仕方ないって! と、ひときわ明るい声で言った。
「そうだね…」
「あ、舞台に誘えば? 今度のやつ」
「…うん、頑張ってみる」
その頼もしい、愛らしい笑顔に、俺も一つ笑みをこぼした。
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mifulu(プロフ) - ほわさん» ご指摘ありがとうございます! バーコードって変ですね笑 これからもよろしくお願いします。 (2019年9月10日 9時) (レス) id: 8875a6e61c (このIDを非表示/違反報告)
ほわ(プロフ) - 誤字とかじゃないんですけど、最新話のバーコードはQRコードにした方が良いと思いますよ!続き楽しみにしてます!更新頑張ってください! (2019年9月10日 0時) (レス) id: d0efce02c1 (このIDを非表示/違反報告)
mifulu(プロフ) - 白うさぎさん» ありがとうございます! ゆっくりになるとは思いますが、楽しんでもらえるよう頑張ります。 (2019年7月21日 23時) (レス) id: 477f578196 (このIDを非表示/違反報告)
白うさぎ - とても面白くて、毎日楽しみにしています!更新頑張って下さい(*^^) (2019年7月21日 17時) (レス) id: 33733f1464 (このIDを非表示/違反報告)
mifulu(プロフ) - 華恋さん» 初めまして(*^^*) ありがとうございます! テストが近いのでゆっくりになるとは思いますが、期待に応えられるように頑張ります! (2019年6月30日 10時) (レス) id: 80a048a51f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:mifulu | 作成日時:2019年6月10日 0時