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「ごめん、すぐ出てくから一本だけ電話かけてもいい…?」


「どーぞ。」


大倉くんがちいさく頷いたのを見てから、体を起こし立ち上がった。スウェットのポケットを外から触ると携帯はまだそこにあった。

ベッドから立ち上がるときに、昨日も大倉くんからした甘い柔軟剤のにおいが私にかけてくれていたタオルケットからふわりと香る。



職場の電話番号に指で触れると寒気がした。

この時間に電話を取るのはだいたい、主任だ。入社したての頃からの譲れない心がけとかなんかで、必ず誰よりも先に出社している。

主任より誰かが早く来ると機嫌が悪くなるのに、日頃から私たちには「決められた時間に出勤するようじゃだめなのよ。」と嫌味のように言う。とにかく他人に何か文句をつけていないと気が済まないひと。

朝から嫌味を言われるのかと思うと、知らないうちに眉間に皺を寄せていた。


大倉くんは相変わらずそこにいる。

コーヒーを静かに飲みながら携帯をいじっている彼に、電話をするんだから気を利かして部屋から出てくれてもいいのに、なんて恩知らずなことも考えてしまう。



そうこうしているうちに電話はつながった。


「もしもし、山田ですが…」


「ああ、山田さん。おはよう。」


「おはようございます。あの、今日なのですが、実は昨日からの体調不良で寝坊してしまいまして、」


こういう時は変に言い訳をする方がかえってこじれてしまうから、きちんと『寝坊』と口にした。

大倉くんが顔を上げてちらりとこちらを見てきたのが視界に入った。


「それはそれは。」


胃がぎゅっとなるような嫌味のたっぷりこめられた口調で主任は言った。


「今から家を出るので朝礼に遅刻してしまいそうです。申し訳ありません。私の意識が足りていませんでした。」


謝る時は淀まずはっきりと。相変わらず頭はがんがんと痛む。

電話越しにため息が聞こえた。


「出来る限り早く出社できるよう努めます。」


身を縮こめてもう一度謝ろうとしたら、いつの間にか目の前に大倉くんが立っていて見上げた瞬間に――



「突然すみません。お電話かわりました、Aの兄です。いつも妹がお世話になっております。」



――すっと手が伸びてきたかと思ったら手と耳の間から携帯が引き抜かれて、当たり前のような顔で大倉くんはそれを自分の耳に当てて喋りはじめた。





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蒼 夢見子(プロフ) - すぅさん» すぅ様、初めまして。コメントありがとうございます^^私には勿体無くも有難いお言葉いただけてとても嬉しいです(涙)これからも楽しんでいただけるものを書けるよう頑張ります! (2018年12月3日 11時) (レス) id: d57fe18bd1 (このIDを非表示/違反報告)
すぅ(プロフ) - こんばんは。今まで読んできた小説のなかで一番素敵な物語です。これからも応援しています (2018年12月3日 0時) (レス) id: 6e6892a55b (このIDを非表示/違反報告)
蒼 夢見子(プロフ) - 茜音さん» 茜音様、こんにちは。こちらにもコメントいただけてとっても嬉しいです...(涙)この間とはすこし違ったいたずらで甘い大倉くんを書きたいなーと思い書き始めました。そう言っていただけると俄然執筆への意欲が湧いてきます!ありがとうございます^^ (2018年11月21日 10時) (レス) id: d57fe18bd1 (このIDを非表示/違反報告)
茜音(プロフ) - こんにちは!こちらのお話にもコメント失礼します。優しいんだか冷たいんだか分からない大倉くんとっても魅力的です好きです(;_;)ヒロインちゃんが幸せになれることを密かに願いながら応援しております、、、! (2018年11月21日 0時) (レス) id: c4843d23a9 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:蒼 夢見子 | 作成日時:2018年11月13日 22時

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