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――一番信頼しとる女友達やから。
目を覚ますと同時に頭蓋骨が割れてしまいそうなほどの頭痛に襲われる。
内容は覚えていないけど、嫌な夢を見た気がする。
確かにいつかの亮の声が聞こえた。
ぞくぞくと寒気がするのに、背中が汗でびっしょり濡れてる感じがして不快だ。
まだ夢の中と現実をふらふらとさまよっているみたいで、起きてはいるけど目を開けられずに瞼の裏を見ながらぼんやりする頭でいろいろ考えた。
そして急に不安と焦りが襲い――
昨日、どうやって寝たっけ?
目覚ましは?
今、何時?
――慌てて目を開ける限り開いて、起き上がった。
「あ、起きた。」
聞き慣れない声がどこからか聞こえてきたと思ったら、開いた私の目がとらえたのはまったく馴染みのない風景。
…ここ、どこ?
「どこって、俺の家。」
もう一度声がして、その方を向いて私は全身の動きを止めた。
部屋の隅のちいさなデスクに寄っかかって手に持ったマグカップに口をつけているのは、スーツ姿の彼だった。
亮の友達の、そうだ、大倉くんって言ったっけ。
そして私は昨夜のことを思い出す。
昨日は、食らえる限りのパンチをすべて食らったような日だった。
体の絶不調と多量の仕事、それから彼の浮気現場との遭遇。あと、亮からの電話。
それで、このひとに会った。
一週間前に引っ越してきたとかなんとかで、屋上で煙草を吸っていたんだった。
――Aちゃんてさ、亮ちゃんのこと好きやろ?
ああ。そうだ。
唐突にまったくおもんぱかりやデリカシーに欠けたようなことを尋ねられて、そこからの記憶がない。
「昨日、いきなり倒れたからびっくりしたわ。」
ほのかにコーヒーの香りがした。
大倉くんはまたコーヒーを静かにすする。
「部屋どこかわからへんかったから、とりあえず俺んち連れてきてん。変な誤解せんといてな。」
すましたような顔でそう言い放つ彼に、多少ひっかかるところがあるけれどそれ以上に頭痛がひどい。
そして何より気がかりなのは仕事だ。
「ごめんなさい…迷惑かけて。あの、今、何時かわかる?」
「8時半。」
腕につけた銀色の時計をちらりと覗き、大倉くんは私にそう告げた。頭からさっと血の気が引いていく。
今から出勤しても遅刻は確実だ。
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蒼 夢見子(プロフ) - すぅさん» すぅ様、初めまして。コメントありがとうございます^^私には勿体無くも有難いお言葉いただけてとても嬉しいです(涙)これからも楽しんでいただけるものを書けるよう頑張ります! (2018年12月3日 11時) (レス) id: d57fe18bd1 (このIDを非表示/違反報告)
すぅ(プロフ) - こんばんは。今まで読んできた小説のなかで一番素敵な物語です。これからも応援しています (2018年12月3日 0時) (レス) id: 6e6892a55b (このIDを非表示/違反報告)
蒼 夢見子(プロフ) - 茜音さん» 茜音様、こんにちは。こちらにもコメントいただけてとっても嬉しいです...(涙)この間とはすこし違ったいたずらで甘い大倉くんを書きたいなーと思い書き始めました。そう言っていただけると俄然執筆への意欲が湧いてきます!ありがとうございます^^ (2018年11月21日 10時) (レス) id: d57fe18bd1 (このIDを非表示/違反報告)
茜音(プロフ) - こんにちは!こちらのお話にもコメント失礼します。優しいんだか冷たいんだか分からない大倉くんとっても魅力的です好きです(;_;)ヒロインちゃんが幸せになれることを密かに願いながら応援しております、、、! (2018年11月21日 0時) (レス) id: c4843d23a9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:蒼 夢見子 | 作成日時:2018年11月13日 22時